佐久間姉弟の事情 番外編 雷雨の屋根の下で

「姉ちゃん起きてる?」
 古い木製のロフトベッドの上段。一段だけ梯子に足をかけると、スマートフォンの明かりだけが愛しい姉の顔を青く照らしていた。時折地を揺らすような轟音がするたび、姉は縮こまってスマートフォンを握りしめた。
「なによ、聡」
「何って、眠れないのかなって」
「聡こそ」
 その声は皮肉と恐怖の色を含んでいた。夏の始まりを告げる雷雨がやってきた。
 窓を叩く雨音。遠い雷鳴。俺達は孤独だった。
「姉ちゃん、こっち来る?」
 青い光が消え、姉が体を起こす。
「うん」
 俺は姉の髪に指を遠し、唇に触れる。夏が連れてきた湿度。
「さとる、こわい」
「知ってる」
 おいで、と俺の寝床に招く。抱き合うと、少し甘い姉の汗の匂いがした。
「姉ちゃん、昔から雷苦手だよな。あと、大きな雨音も」
「煩い」との悪態もどこか弱々しかった。そんな姉が可愛くてしょうがなかった。
「早織、大丈夫だから」
 名前を呼ばれた彼女は、耳を紅く染める。
「何よ、いつの間にかイケメンになって」
「俺は早織の前でならいつでもイケメンだよ?」
「ばーか」
 そう俺の頬をつねった姉は嬉しそうに笑っていた。
「姉ちゃん眠れそう?」
「私は大丈夫だけど、聡は眠れないんじゃないかな?」
 姉の手が俺の隠れた三日月に触れる。
「生理現象です」
「まったく、私の弟は相変わらず元気なことで」
 暗闇の中でも姉が糸切り歯を見せて笑っているのが分かった。
「好きな人とベッドで抱き合ってこうならない方が寂しくない?」
 あえて昂ぶりを姉の腰に押し当てる。姉の呼吸が速まるのが分かった。
「何、するの?」
「早織がいいなら」
「私は、うん」
 姉は答えない。答えなど要らない。彼女の体温が答えなのだから。
「聡、好きよ」

 人は暗闇を見て夜だと知り、光を見て朝だと知る。
 腕の中でまだ眠る姉の顔を見て、今日も彼女がいることに感謝する。離れられない、たった一人の姉だから。
「姉ちゃんおはよ。もう晴れてるね」
「ん……聡暑い離れて」
 理不尽なところも姉である。狭いベッドから這い出て背筋を伸ばす姉を見ていた。
「今日は腰平気?」
「おかげさまで筋肉痛です」
 姉のスラリとした脚と引き締まった尻のラインに見とれる。
「綺麗に晴れたわね。台風一過ってやつ?」
「台風ではないけど嵐の後だよな」
 起きない頭で無意味な会話をする。今日は休日だった。
「私、朝ごはん作るけど聡はどうする?」
「寝る」
「でしょうね」
 一度目は覚めても頭が起きるには時間がかかる。
「相変わらず朝に弱いわね」
「姉ちゃんが強いだけだよ」
「はいはい、できたら呼ぶから。目玉焼きは?」
「半熟を二個」
「はーい」
「おやすむ」
 おやすみ、と夢への入り口のキスを一つ置いて彼女はキッチンへ向かった。



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2017/07/18 (火)

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