vanilla 14

 確かこの辺りは劇場のあったあたりだろう。行く当てのない愛実は自然とこの場所にやってきてしまった。生ごみが水たまりで腐る異臭も、酔っぱらいが残した吐瀉物も、何もかも愛実にはおあつらえむきだと思えた。
 サンダルの先を見つめて歩いていると、男の集団にぶつかってしまった。
「ってえなあ! どこ見て歩いてんだ」
 小さな声ですみませんとだけ呟くとその場から立ち去ろうとする。
「おい、聞こえねぇんだけど? あぁ?」
 集団のうちの小太りな輩に腕を掴まれる。離してともがいても、愛実の細い腕では敵わない。
 リーダー格と思われる首にタトゥーの入った男に顎を掴まれる。睨み返すと、なんだその目は、と愛実はゴミ箱に投げ飛ばされた。
「っあ……」
 起き上がろうとすると、腹に数回、蹴りを入れられた。何も食べていない愛実の口からは酸の強い胃液が吐き出される。痛みがこんなに苦しいなんて知らなかった。
「おい、これ見てみろよ」
 集団の中の一人が、愛実の露になった背中を指さす。
「こいつ『夜蝶のシャル』だぞ」
「おお? あの有名なシャルちゃんじゃないか。こりゃあ、とっ捕まえて売り払ったら大金になるぞ」
 男たちの下種な笑いに愛実は嗤っていた。そうだ、僕は所詮売り買いされる商品だ。僕の人生なんてそんなものだ。でも、真琴は僕に価値をくれた。真琴、助けて、まこ――
「つぐみ!」
 知っている声が聞こえる。ああ、お迎えでもきたのかな。
 愛実はそこで意識を手放した。

「愛実、目、覚ましたか?」
 目を開けると見知った天井だった。見渡すと片付いていないアパートの一室。
「北原さん?」
 狭いパイプベッドの脇に、髪の長い無精ひげを生やした男が腰掛けていた。
「愛実、なんであんなところに居たんだ。帰ってくるなと言っただろ」
 キツイ言葉に反して、北原は愛実を強く抱きしめていた。懐かしい匂いに涙が止まらない。怖かった、怖かったと愛実は泣く。しかし、胸に鋭い痛みが走る。北原は「あばらをやったか」と抱きしめる手を緩めた。骨が折れた痛みは、別に気持ちよくなんてなかった。
「北原さん、僕、好きな人ができたよ」
 ベッドに寝転んで、北原の手を握る。
「そうか、真琴に惚れたか」
 親しげな物言いに愛実は首をかしげた。
「お前を引き取った引田真琴は、俺の高校のダチだ。話せば長くなるが、聞くか?」
 愛実は目の端から零れ落ちた涙をスウェットの袖で拭うと、うん、とだけ答えた。
「まずお前に言わなきゃいけないことがある。愛実、お前の父親は俺だ」



お読み頂きありがとうございます。
シャル(愛実)に酷いことをするのがクセになっている作者です。
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2016/02/23 (火)
vanilla

vanilla 小ネタ集 2016/01

2016.01.02

シャルを高校に通わせたい(願望)

定期的にやってくるR18小説書きたい衝動 だったらvanilla進めろよって思うけどしばらくエッチなシーンないんだもん(´・ω・`)ドエロいの書きたい……増やすか

僕の性的衝動のままにvanillaに濡れ場が追加されようとしている。これはひどい。

引田さんがあまりにも優しいから「もっと痛くしてよ」と懇願するシャルとかさ……優しく肩に歯形を付けて、筋が切れる痛みにエクスタシーを感じるシャルと、よがるシャルが愛しくて、でも痛いのは心苦しいと葛藤する引田さん
歯形を優しく舌で撫でて抱き締めてほしいよね
マゾにいいなりのサド役よい

シャルの首に残されたキスマークを見て萩野さんはどぎまぎすればいい。あの子はうぶであってほしい。絶対童貞だからあの子(

さーてどうやってシャルにエッチなことさせようかなーうぴぴー
引田さんに構ってもらえなくて……というフラストレーションを溜めに溜めてほしいところ

vanillaの萩野くんを可愛がってみたいな
うぶな童貞メンタルくんであってほしい
んー、でも彼女がいてもいいよなぁ……萩野くんは引田邸に通っている家政夫だけど、就職するまでに何かしらのドラマがあってもいいよね

萩野くんの設定を今になって練ってる
車の運転はできるから20歳くらい
元々引田さんのお世話をしていた家政婦の孫で、萩野ばあちゃんが体調を崩してから代わりに引田さんのお世話をするようになる……?
萩野くんは不登校児で、よく萩野ばあちゃんのお手伝いに来ていたとかね

vanillaの初期プロットからだいぶん離れてるんだけどシャルの心境の変化だけはしっかりと描きたい
引田さんの心境も何かしら変わってくるかなぁ
とりあえずの目標はシャルを【ネタバレ】へ【ネタバレ】ること!


2016.01.03

脳内で萩野くん×シャルの濡れ場が再生されているのだが引田さんが卒倒するからやめろ

萩野くんがいいキャラしてるというか、そういう気持ちだったのかウワー
萩野くん……お前という子は(*T^T)健気やなぁ
濡れ場になるとサクサク進む僕で会ったことよ……萩野さん君って子は全くもう

vanillaの萩野さん萌えが激しい
叶わない片思いアアアアアアア

萩野dr期なう
シャルに絡ませたらたいへんなことになった。よい。

さーて引田さんとシャルの濡れ場を書きますうふふ
セックスしか能がないと思いこんでいるシャルですからね

萩野さん、もっと自分の欲求を表に出していいんだよ
って書きながら泣いてる


2016.01.05

序章のSMシーンは思い切ってやった感ありますね。 シャルを可愛がってくださって本当に嬉しいです!!!幸せにするべく僕も頑張って書きますね。

vanillaは流れも考えるけれど基本的に文字数で区切って投稿しているので変なところで始まって終わります。一冊の本にするのが目標なのです。





2016.01.06

今のところどんな人なのか不透明なのが引田さん
どんな思いでシャルを買い取ったのだろう……

引田×シャルがメインですが引田×萩野もシャル×萩野も北原×シャルも引田×北原も美味しいので我ながらよく書けてると思う(自画自賛することでやる気を出している)

拗ねるシャルに「折角の美人が台無しだ」と言っても「こんなことで僕の美貌が揺らぐものか」って言い放つからもうお前大好きだ……

vanilla書き始めたときって1ページめしか無かったんだよね
引田さんの名前も職業も決まっていなかったし
ただ美しい少年が暴力をふるうシーンが書きたかっただけだった
それがその少年を幸せにするお話に成長してると思うと感慨深い


2016.01.11

「vanilla」というタイトルは好きな曲のタイトルから。
スパイスのバニラは甘い香りがするけれど無味というシャルの「人を魅了するけど中身は空っぽだ」という自己評価とvanilla→burning love=燃え上がる愛という意味があります。

登場人物に心のなかであだ名をつけています。vanillaなら北原さん、シャルたん、まこっちゃん、ぎのっち。このあだ名のセンスを活かせる場が分からなくて、蒼血のりなたむ(正木莉那)に変なあだ名で他の登場人物を呼ばせています。


2016.01.12

あああシャルたんを可愛がりたい

ぎのっちとシャルたんの衝突とかね、もうね、よいよ。どんどんやろう。

ぎのっちが救われるルートはないのかな……辛すぎる

「傍にいられるだけでいい」と自らの恋心を隠すのって、僕の恋愛観からすると「馬鹿じゃねーの恋は戦争なんだよ奪ってこいよオラオラ」と煽りたくなるのだが、関係を壊したくないという恐れは誰もが持っているものだよなぁ

北原さんはシャルのことベッドにぶん投げて覆い被さるけど、引田さんはシャルをお姫様だっこしてベッドに優しく寝かせてから瞼にキスするよね……よい、書く……


2016.01.13

シャルは愛されることを怖がるけど、なんで怖がるんだろうね
自由になることが怖いんだろうな


2016.01.17

絶賛連載中の「vanilla」の登場人物は全員愛しすぎていじめすぎていますね。人身売買に貧富の差に叶わない恋。みんな傷付いて歪んで泣いている。泣かせているのは他でもない作者の僕なんですけどね
#愛しすぎていじめすぎた我が子を紹介

空っぽのシャル。羽根をもがれた夜蝶のシャル。彼の生きる意味は性から逃れられない。何故なら彼がそう信じているから
と、いうフレーズは多分使わないから流しておこう

vanillaを全編R18にしてるのって本当に好き勝手書きたいからってだけなのよね
SMショーは骨折流血上等だし、人身売買も平気でするし、意味のあるセックスシーンもたくさん書きたかったし
好き勝手書くけど過激なのである程度抗体があって理解できる大人だけ読んでくださいという意味です


2016.01.18

Q.引田さんとシャルがセックスしたことを知った萩野の心境を4文字で答えなさい。
A.死にたい

ぎのちゃん目線でvanilla読むと死にたさMaxだなこれ……ぎのちゃん頑張れ

どれだけ恋心を育てて何年も思っていても、想い人が出会って数日の相手に心奪われサクッとセックスされたらそりゃ死にたくもなるわな。ぎのちゃん、強く生きて。

引田さんも引田さんですよ
お前本当に自制心足りてないな
クズいわぁ……クズに金持たせちゃダメだって

vanillaの人物相関図を書いたら4人しかいないのにドロドロしてて笑った
さてさて、どの順番で情報を開示しようか

シャルに茶を挽かせたい。
※茶を挽く:遊女が暇を持て余すこと
と、読者の知識を問うことをたまには書いてみてもいいのかもしれない


2016.01.19

瓔珞をつけたシャルの図を受信してキャッキャしてるけど本編にそのようなシーンはございません

唐突にシャルに暴力を振るいたくなってるけどまたプロット変わるからやめてくれ……

骨は折らないけど腹パン嘔吐流血くらいなら……(やめなさい

よし、ストーリー浮かんだ シャルたん痛いけど我慢してぼこられて?

マジ最低な作者だわ……ホントごめんて……でも萌えちゃったから許して……R18だから好き勝手やるわごめん

えーどうやったらシャルたんは引田さんに惚れるのーーー?????プリン食わせるか?????(やめなさい)

引田さんとシャルのお清めセックスはありか
無い方がシャルの成長を感じる気もするが、えっちなお姉さんたちには物足りないんだろうな

これからの見せ場はやはりぎのちゃんの慟哭ですね。いやぁ、よい。

ほわっ!?降りてきた゚+。:.゚(*゚Д゚*)゚.:。+゚引田さんそれは言っちゃいけないよシャルたん激怒するよ最高だよあざっす

そういえばね、冊子用にvanillaの副題を考えていたんだけど「It's not sweet but burning love.」になりそう それは甘くないけれど燃える愛。

萩野さんの見せ場はこれからなので楽しみにしていてください!!!!!ありがとうございます!!!!!

北原さんもね、僕大好きなんだよ
長髪のもっさいおっさんだけどしっかりしてて横暴だけどしつけがちゃんとできる人でね
ネタバレになるから言えないけど、今後の彼にも注目してやってください

北原さんの台詞を脳裏に浮かべて、早く伝えたいなと楽しんでいる 今日はもう寝るけどね


2016.01.20

引田さんが萩野(しゅんすけ)さんのこと「しゅんちゃん」って呼んだら全萩野さんが萌え死するよね……そんなシーンも入れておこう

vanilla書いてて「これからどうなるの?」とありがたいことにたくさん期待の声をいただくのだが、なかなかのプレッシャー
タンディングオベーションをいただけるほどの素晴らしいラストを描けるだろうか

どうしたらシャルは幸せになりますか!!!!!分かりません!!!!!

うう、精一杯幸せにするよ
愛に悩むのは本当に愛している証拠だと僕は知っている


2016.01.21

vanillaの登場人物にそれぞれ好きな食べ物を決めていたのだが、萩野くんはバニラシェイクが大好きです
スタバに行っては真冬でもトールサイズバニラクリームフラペチーノエキストラホイップシロップ2倍キャラメルソース追加を注文します
キャラメルスチーマーにしようよ風邪引くよ

引田さんの金持ちオーラが足りない
豪邸の様子や「金ならある」という横暴さやシャルの今までの生活との対比が足りない
仕事ができて人望があってというキラキラオーラも足りてない
シャルが惨めな思いをするほどの輝きを放って欲しい

今、シャルは「僕なんて所詮娼夫だし金で買われた商品だから」って思ってるけど、そのうち「僕なんかがこんな立派な人に愛されていいのか」って思い詰めて欲しい
僕の技量次第だな……頑張れ

vanillaを書いていく上で手腕の壁にぶつかっている
もっと描くべきものがたくさんあるのに……ここから足していって果たして綺麗にまとまるのだろうか
広げすぎて物語が収束しなくならないだろうか
伏線をしっかり回収できるだろうか
それぞれが幸せになれるだろうか
不安だ(´_`。)゙




ただの家政夫として登場させた萩野くんがこんなに愛されキャラになっているのドラマティック…… そしておっさんたち影薄いなぁ(出番はこれからなんですけどね)

僕が拙作BL小説「vanilla」を自画自賛するなら『引田×シャル』『北原×シャル』『シャル×萩野』『引田×北原』『引田×萩野』と接点のある人たちすべてのCPが美味しいところだな……北原と萩野はまだ出会ってないから無いけど、出会ったら何か変わるかな?

指摘をいただきましたが、萩野絢介(はぎのしゅんすけ)です
荻野(おぎの)じゃなくて萩野(はぎの)だよ

キャラクターの名前を決めるとき年齢を考慮しますね
真琴とか誠司とかはおじさん(30代)でもありそうだよなと
逆に絢介は若い(20代前半)なーと
シャル(10代後半)の本名はまだ秘密( *´艸`)


2016.01.22

シャルの髪の毛の色が僕のなかで安定していません。白髪だったりグレーアッシュだったり黒だったり。最終的に黒になりました。ふわふわつやつやの黒髪素敵です。
そして床屋に行ったことがなく、以前は北原さんに切ってもらっていました。

引田さんは製菓会社の社長です。会社のイチオシ商品はシャルも大好きな生クリームのせカスタードプリンで、全国のコンビニで買うことができます。チーズケーキやシュークリームもおすすめです。仕事の話は家に持ち帰らない派なのであまり語ることも無さそうです。

製菓会社の社長なだけあって引田さんは甘いものが好きです。しかし30も半ばなだけあって下っ腹を気にし始めています。暇な日はジムに通っていたりしますよ。案外ムキムキ。よい。

第二回人気投票で見事優勝した萩野絢介くんは21歳です。元々引田さんの家で家政婦として働いてた祖母についてよくお手伝いに来ていたところ、祖母が体調を崩したため萩野くんが代わりに引き換え家で働くようになりました。

萩野くんはいじめられっ子で、小学校中学校はほとんどいかずに引田さんの家で働く祖母のお手伝いをする日々でした。引田さんの勧めで高卒認定を取得したのが19歳、それから20歳で通信制大学に進学しました。 根は真面目なのでお勉強もコツコツやります。

北原さんは肩につくほどのくすんだ金髪をぼさーっとさせているイメージです。タバコの似合うだらしないおっさん最高。シャルに対して厳しくあたるのも愛情故でしょう。何故シャルを売ったのか。何故今までシャルと同居していたのか。それは物語でのお楽しみです。

北原さんはバツイチです。何で離婚したんでしょうね。若気の至りでしょうかね。

北原さんがシャルの本名を呼ぶシーンが2話にありますが、本名って大きな力を持つと思うのです。もう少し先になりますがいつか明かされるときがくるのでお楽しみに。

みんなのパンツ事情
シャル→ノーパン
引田さん→ブリーフ
北原さん→トランクス
萩野くん→ボクサーブリーフ
シャルたん、パンツ履こうよ。

ブリーフisダサいみたいな風潮あるけど、ビキニみたいなものだと思ってくだされば(震え声) なんか、社長っぽいじゃん?

シャルはいつも異常に薄着で、身なりを整えることができません。心の闇ってそういうところで表れるよね。ショーやセックスの前後にお風呂に入るということは北原さんに教え込まれているようです。


2016.01.24

バレンタインデーってチョコじゃん。お菓子じゃん。これはもう引田さんが新作を作るわけですよね。あっ、短編の予感。

新作の試食に付き合わされるシャルたんとかさ、いいよね
萩野くんはゴディバのチョコレートドリンク飲みに行きますよね、ええ
北原さんに手作りチョコを渡しに行くシャルたんもいいね(猛烈なネタバレ要素)

vanilla執筆中なのだが親バカすぎる北原さんが脳内でいちいち怒号を浴びせてくるので笑ってしまう……分かったから落ち着いてよ北原さん

萩野くんを虐めすぎて全萩野ファンに殺されそう


2016.01.25

#女も殴れるあなたのお子さん教えてください
殴るのに男も女も関係ないよね……なんだこのタグ
シャルと北原は殴るのが仕事で性癖です

シャルの性癖についていけなくて北原に相談の電話をする女々しい引田さんください(セルフクソ同人)

愛されることを怖がる男娼と
愛し方が分からない若き社長と
愛されることを諦めた使用人と
愛することができなかったある男が
それぞれの愛を掴む物語
※非社会的・暴力的・性的な描写を含むR18なBLです
#時間ない人向けうちの創作小説あらすじ

なおぎのちゃんが救われるルートが未だに分からなくておじさん申し訳ないよ

ぎのちゃんごめんて……ごめんて……(ハイパー萩野さん虐めタイム)

なんだろう、シャルに酷いことをするシーンは楽しくサディスティックに書けたんだけど、萩野さんに酷いことすると申し訳なさで泣きそうになる
萩野さんを幸せにする方法が分からないからかな

シャルを虐めるのはプレーだけど萩野さんを虐めるのは犯罪みたいな、そんな罪悪感に駆られながら書いていますが明日更新です(ちゃっかり宣伝)


2016.01.28

うちの子まとめを見直したらシャルの誕生日は1月14日でした……逃した(´;ω;`)ウゥゥ

んんんん進まない(´;ω;`)ウゥゥ
不透明な個所やな
引田さんが安定のクズだし


2016.01.30

引田さんの自己紹介書くこと無さ過ぎてどれだけ薄いキャラなんだと悲しくなってる(´・ω・`)



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2016/02/22 (月)
vanilla

いただきもの コメント返信

こんばんは、佐倉愛斗です。
とあるイベントに出展する機会をいただいて、準備に取りかかっております。
その一環として「LGBTアンソロジー」というものの主催をすることにしました。
至らないところもあるかと思いますが頑張っていきます。
詳細はまた後日お伝えしますね。


いただきもの

Twitterの企画で、「vanilla」のシャルを描いていただきました!
CbQ8qm4UMAAGdI.jpg
描いてくださったのはTwitterでお世話になっているはしばみ(@hashibami_bami)さんです。
物憂げでセクシーで強気なシャルそのものでもんのすごく可愛らしいです。
プリンのこともよく知ってくださっていて本当にもうありがとうございます!!!!!
描いていただきありがとうございました。本編頑張りますね!


コメント返信

02/15吉川蒼さま

思い出したように一村くんを描いてみると、本当に春子ちゃんのことが好きなんだなと感じます。
こんなに優しくて愛情深い子は他にいないんじゃないかと思っていますよ。
また本編の方も進めていく予定ではいます。頑張って書きますのでよろしくお願いいたします!
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2016/02/21 (日)
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140字SS 091~095

091 おため詩

貴方の愛の言葉 どうしてそんなに軽いのかしら
使い古されたフレーズ 私は作り笑いを浮かべたわ
あの子にも その子にも きっと貴方は囁いた
私だけの言葉を頂戴
わがままだと言われてもいい
私だけの言葉を頂戴
貪欲になってもいいかしら




092 終わりの旅

「ここは電子カード使えないのね」
 彼女は紙の切符を握りしめる。
「いいじゃないか、思い出に残るぞ」
 彼は陽気な声を作った。
「この山も、遠くに見える海も、一面の茶畑も、あなたと見られてよかった」
 彼女は彼の膝に涙を落とす。彼は彼女の肩を強く抱いた。




093 空膜

 冬の夕暮れ空は低いところが燃えるように紅く、薄紅、黄、紫と色が連続して移り変わる。
 高いところは暗いペールブルーで、星のないプラネタリウムのスクリーンを見ている気分だった。




094 母へ

 パートのおばちゃんがくれたチョコブラウニー。娘が昨晩作りすぎて困ったからとタッパーに入れて配っていた。
 砂糖が所々固まっていて、パサパサして、ココアの香りがきつくて。僕は料理が下手だった母のことを思い出した。
 都会の喧騒に忘れていたメールの続きを送る。
「母さん、いつもありがとう」




095 暴力的な言葉

 誰でもいいから愛されたい、なんて愛を知らないから言えることだ。
 目の前の生き物は僕に涙ぐみながら好きだと言った。
 一方的な告白は暴力的で、僕は過去の僕の愚かさに気付く。
 好きでもない人からの愛ほど気持ち悪いものはなかった。







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2016/02/19 (金)
140字SS

vanilla 13

 窓から月明かりが射しこみ、彼の美しい躯体を照らす。無駄な脂肪も筋肉もなく、古い西洋の人形のような美しさ。白磁の肌は曇りひとつなく、ただ腰の左側に刻まれたアゲハチョウのタトゥーが無機質に彼の娼夫としての存在を物語っていた。
「引田さん、引田さんのこと好きだよ」
 彼は引田の腕の中に潜り込むと、薄い桜色の唇を引田の唇と合わせる。幾度となく繰り返しても飽きることはなかった。
 愛される幸せなど分かりもしなかった。愛されることは必然で、同時に終わりがあることも必然だった。人生と同じ。終わらないものなどない。そして、どちらも無価値で、脅威だった。終わらないと微かでも信じてしまっていた自分に腹が立ってしょうがなかった。
 舌を伸ばすと、応えるように吸われる。引田の厚い下唇を吸うと引田の体温が上がるのが分かる。
 引田が優しく彼の首筋に歯を立てる。毛細血管が破れる痛みに甘い声を漏らす。痛みは彼の快楽の全てだった。思えばあの日も男の骨を砕いて、その痛みを想像してひどく興奮した。北原に縛られ、頬を叩かれることが屈辱的で快感だった。
「引田さん、もっと」
 引田の耳にキスをする。引田に強く抱きしめられると、お互いの雄が腹を圧迫する。引田の手が彼の成熟した雄に触れる。どこまでも優しく、慈しむような愛撫がくすぐったくてしょうがない。でも、嫌いじゃなくなっている自分に彼は悲しくなった。
 離れたくない。でも。
 解された孔に引田の中心をあて、ゆっくりと腰を下ろす。逆流する違和感と抗えない快感に彼は呻いた。
 奥まで飲み込んで、彼はかすれた声で言う。
「引田さん、僕の本当の名前はね、愛実(つぐみ)って言うんだ」
 引田は彼の最奥を許された幸せに身体を震わせた。彼の本当の心を知らないまま、本当の彼を手に入れたつもりでいた。
「愛実君か。可愛らしい名だ」
「うん、美波愛実が僕の本当の名前。ねぇ、名前呼んでよ。真琴さん」
 引田はシャルと呼ばれた青年の上体を抱きしめる。
「愛実、愛してる。ずっとここに居てくれ」
「うん、真琴、愛してるよ」
 だから僕はここにいちゃいけない。そう愛実は涙を落とした。それを感激の涙だと思いこんでいる引田は雄々しく愛実を押し倒すと、激しく求めるように腰を穿つ。
「あっ、いひっ、まことっ、好きぃっ」
「愛実、つぐみ、好きだ」
 強い快感から逃れようとシーツを掴むその手を、引田は掴み、手首にキスをする。離しはしないとシーツに縫い止める。引田の想いの大きさに、愛実は悲しくなるばかりだった。僕よりずっと相応しい人と結ばれるべきだと、愛されるほどに思う。
「そんなに泣かないで、愛実」
 嬉しいだけだよ、と嘘をついた。愛すれば愛するほど、自らの空虚に脅かされる。もっとこの男に相応しい人はいるはずだ。使用人の萩野だって、彼のことを好いていた。それを知らずに僕ばかりが愛されようとした。愛なんか要らないと自分を守るばかりで。
「真琴、愛してくれてありがとう」
 一筋の涙を落として、愛実は快楽の先へといった。

 翌朝、引田が目を覚ますと、隣に愛実の姿はなかった。



お読み頂きありがとうございます。
シャルの本名は書き始めた当初から決まっていました。そしていつ明かすかずっと悩んでいました。
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2016/02/16 (火)
vanilla

一村くんは数学的天才ではない 小ネタ集 2016/01

2016.01.01

#うちの子が新年のご挨拶
一村夏目「新年あけましておめでとうございます。今年は閏年ですね。閏年は西暦が4で割りきれ100では割りきれない年と400で割りきれる年です。見分けかたは下2桁が4の倍数である、もしくは下2桁が0で千と百の2桁が4で割りきれない年ですよ。今年は2016年。下二桁が16なので4で割りきれますね。なので閏年となります。1年がほんの少し長い年ですが、考えられる時間というものはこの恐ろしく長い地球の時間の一瞬です。新しい数学の世界を発見できるよう今年も努めてまいります。」


2016.01.02

僕にとって最大の濡れ場は一村くんに数学語らせているときです。
恍惚とした表情で雄弁に数の世界を語る一村夏目。唾液の粘り気が増して瞳が熱に潤む。静かに沸騰する血液が頬を染めて、急く心臓に掻き立てられて言葉に熱い吐息が混ざる。果てしなく広がる数の世界に身を投げて、快楽のままに……

眠いとつらつら言葉が出てくる。眠いとムラッとするじゃん?それです。
一村くんの異常性癖はなかなか想像しづらいんだろうなー


2016.01.05

彼氏に円周率がひたすら書かれている本をもらったのだがどうしろと。覚えればいいのかな

僕が数学ならなんでも食いつくと思うなよ!!!!!(大興奮で受け取りましたありがとう)


2016.01.07

演算を加減しか持っていないとプラスがマイナスになるとたくさんのものを失ったように感じるけれど、そこに乗が加わるとプラスをマイナスにするのもマイナスをプラスにするのもどちらもマイナスをかけていること同一としてみなせる
手持ちの道具が多い方がもっと広い世界に出会えると信じてる

そこに除法とか巾乗とかΣとかΠとか加わるとね(落ち着きなさい)

マイナスをかけることを180°の回転とみなしている僕は複素平面上に生きている

群とか法とかもっと勉強したい範囲ではある(数学の話)


2016.01.09

思考回路が基本数学馬鹿なので、唐突に多次元の話をしたり科学哲学的なお話が出てきます。そのくせSFは書いたことありません。書けるほど詳しくはないのです。もっと勉強したいですね。一村くんが語る数学も高校生が理解できる範囲です。


2016.01.12

複素数 #これ見たフォロワーさんは自分のフェチ晒していけ

半径が0未満の円は座標平面に虚軸ぶっさして立体として把握すると花弁吐ける程度には萌えるんだけど、半径が0未満の球は座標空間に虚軸ぶっさして四次元的に捉えたら何か見えるのかな……四次元の扱いがまだ下手だからなぁ


2016.01.19

「一村くんは数学的天才ではない」の一村くんのことを哲学者の知り合いに話してみたら「数学で性的興奮を得られるのは一種の才能で天才と呼べる」と言われたので一村くんは数学的天才らしいです(本末転倒)


2016.01.29

 今日は運がいいみたい。
 今朝乗った電車の番号は2116。平方数。
 バスのナンバーが1024。2の累乗。
 偶然もらったスーパーのチラシには6時から特売。階乗数で完全数。
 時計を見ると8時21分。互いに素。
「おはよう、一村くん」
 ほら、朝からいいことがあった。
「おはよう、樋野さん」

やっぱり数字といえば一村くんですよ。僕のクソ数学フェチを全て投影した物語ですから。
今日も本屋の数学書のコーナーで一人(0゚・∀・)wktkしてきたよ。「虚数の情緒」読んでみたいけど分厚すぎて何年もかかりそうと震えてきたぜ(N回目)(Nは自然数)







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2016/02/15 (月)
一村くんは数学的天才ではない

vanilla 12

「いってらっしゃい」
 シャルはいつも早起きをして引田を見送るようになった。
「いってきます」
 そして必ず、キスをするようになった。
 朝の見送りだけではなく帰りも、寝る前も、廊下ですれ違った時でさえ首に腕を回しては触れるだけの口付けを交わす。
 それに加えて、萩野に教わりながら家事を手伝うようになった。食器を割るなどの失敗はしたが、元より器量の良かったシャルはすぐに家事を覚えた。
 シャルは無味な自分が味付けられていくのを感じていた。自分が必要とされ、自分が必要とする人の存在に胸の奥が温まるような心地だった。ただの口付けだったかもしれない。それでも初めて自覚した「優しさ」にシャルは身体に翼が生えたような心地だった。
「はぁ」
 リビングの床に座り、洗濯物を一緒に畳んでいると萩野が溜め息を吐いた。ここ数日、萩野は気付けば溜め息ばかり吐いていた。
「萩野さん、どうかしたの?」
「なんでもないです。なんでも。ただ、シャル様が料理もお洗濯もできるようになってしまわれたら僕はもう要らないのだなと思えてしまって」
「それは困るよ。萩野さんのご飯美味しいのに。この前の坦々鍋美味しかったよ」
 いかにも幸せという香りを放っているシャルに全部ぶちまけてしまいたかった。愛する人に愛される幸せはどんな心地か聞いてやりたかった。
 半分ほど畳み終わった頃、明るい呼び鈴が鳴る。何が届くかおおかた予想がついていた萩野はシャルに印鑑を持たせて出るように頼んだ。
 郵便で届いたのは、掴めるほどの厚さがある冊子だった。封筒には「写真」と書かれている。
「萩野さん、これ何?」
「お見合い写真ですよ」
 シャルの視界ががらがらと崩れるようだった。視界の端で萩野が笑っているように見えた。
「お見合いって、何」
「シャル様はご存じないですか? 男女が第三者の紹介で出会って結婚することですよ」
 萩野の声はいつもより低くて穏やかだった。その声がシャルの心臓に突き刺さる。
「そんなこと僕は知っているよ。なんで引田さんに届くの?」
「何故って、もう旦那様も三十後半です。もう結婚なさっても可笑しくない歳ですよ」
 シャルは膝から崩れ落ちた。僕を愛しているのは嘘だったのだろうか。いや、きっと本当だ。男同士のカップルの末路は嫌と言うほどシャルは知っていた。引田は社長だ。きっと跡取りが必要だろう。
「僕はやっぱり、ここにいてはいけなかったんだ」
 小さな涙をシャルは落とす。すると萩野は呟く。
「何故、あなた様なのですか」
「え?」
 萩野は激高のままにシャルの肩をつかんで床に倒した。畳んだ洗濯物の山が崩れる。
「何故、あなた様なのですか。何故僕ではなくあなた様が選ばれたのですか」
 驚いたシャルが目を見開くと、今まで見たことのない萩野の感情的な顔がそこにあった。熱い雫がシャルの頬に落ちる。
「何故シャル様は愛されていることを受け入れないのですか。旦那様はもうすぐ結婚するかもしれない。それでも、何故一瞬でも愛された喜びを大事にできないのです」
 僕はあなたが羨ましい。それだけ吐き出した萩野は、シャルの上から退いて静かに崩れた洗濯物を畳み直した。
 知らなかった萩野の想いに、シャルは泣きだすことも声をかけることもできなかった。
「やっぱり僕はここに来てはいけなかった」
 シャルは逃げるようにとぼとぼ階段を降りて、自室のベッドでやっと両袖を濡らした。

 引田が帰宅すると、シャルは笑顔で迎えてくれた。しかし心もち寂し気で、目の端が赤いような気がした。
「引田さん、僕の名前、知りたい?」
 シャルは引田の腕の中に縋り付いて、絞り出すように言った。



お読み頂きありがとうございます。
北原さん再登場です。お待たせしました。
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2016/02/09 (火)
vanilla

蒼血のアフェクシオン 小ネタ集 2016/01

2015.01.11

登場人物に心のなかであだ名をつけています。vanillaなら北原さん、シャルたん、まこっちゃん、ぎのっち。このあだ名のセンスを活かせる場が分からなくて、蒼血のりなたむ(正木莉那)に変なあだ名で他の登場人物を呼ばせています。



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2016/02/08 (月)
蒼血のアフェクシオン

140字SS 086~090

086 失音

 音楽は僕の全てだったと男は話す。
一度しかない青春時代と若い情熱を全て音楽に捧げ、人を楽しませることを何よりの生き甲斐としていた。
 男は音のない部屋で涙を落とした。どれだけ泣き叫んでももう聴こえない。
 もうどう生きたらいいのか分からないと男は嘆いた。
 世界からひとつ、色が消えた。




087 苦悩

 人は難題にぶつかったとき、名前に名残を残す。
 0より小さな数ってなんだろう。
 2乗して負の数になる数ってなんだろう。
 そうやって私たちは数の世界を広げてきた。
 苦難した過去の数学者たちに思いを馳せて、今日も私はノートに向かう。
 新しい数の世界を見つけるために。




088 3.141592

「3.14159……」
 習ったばかりの数を弟が読み上げる。
「兄ちゃんはどこまで覚えた?」
「50桁くらいかな」
「じゃあ僕はもっと覚える!」
 一心不乱に数列を唱え始める弟の頭を撫でる。
「この数の中には兄ちゃんたちの誕生日もあるんだよ」
「ほんと!?」
 その目の輝きを忘れないでね。




089 8.2秒

 1秒、2秒、彼は私の目を見つめる。
 3秒、4秒、じっとりと、燃える瞳で私の心を見抜こうとする。
 5秒、6秒、大きな喜びと恥じらいに顔中を赤く染める。
 7秒、8秒、心の声が喉を突き破りそうになるのを唇を気付く結んで堪える。
 8.2秒、「貴女に一目惚れしました」




090 ラッキーナンバー

 今日は運がいいみたい。
 今朝乗った電車の番号は2116。平方数。
 バスのナンバーが1024。2の累乗。
 偶然もらったスーパーのチラシには6時から特売。階乗数で完全数。
 時計を見ると8時21分。互いに素。
「おはよう、一村くん」
 ほら、朝からいいことがあった。
「おはよう、樋野さん」







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2016/02/05 (金)
140字SS

vanilla 11

 長い昼下がりが終わり、世界は夜の街に変わった。
 ただいま、といつもより明るい声色を繕って引田は帰宅した。自室から出迎えてくれたシャルを抱きしめると甘い香りが引田の本能をくすぐった。
「シャル君、今日は君の好きなプリンのお土産だよ」
 シャルの輝いた瞳を見て、引田は喜びと罪悪感で胸がいっぱいになってしまった。

 引田は昼休み、ある男に電話をかけていた。
「やっぱりやっちまったか」
 シャルの美貌に屈しなかった男はいないと電話越しの男はそれみたかと嗤う。笑い事じゃないと引田は続けた。
「どうしたら彼を幸せにできるか分からなくなってしまったよ」
「そんなこと俺が知るか。ったく、二日で泣き言言いやがって、それでも社長様か?」
 相変わらずの横柄な口ぶりに引田は苦笑する。
「お前が面倒見るって言ったじゃないか。俺が言えたことじゃないが、親なら悩め。いっぱい悩め。それが愛ってもんだろ?」
「まさか君に愛を説かれるとは思わなかったよ」
 まったく、誠司には敵わない。

 リビングのソファーで嬉しそうにプリンを食べるシャル。惜しむように小さな口で少しずつ。カラメルと生クリームが絡んだカスタードプリンを大切に食べる姿に本来の子供らしさを垣間見ることができた。
「シャル君、話があるのだがいいかね?」
 シャルの手が止まる。見開かれた瞳は不安に揺れ、そして諦めたように笑った。
 引田はソファーの前に跪いて、シャルの手を握る。
「シャル君、私の家族になってはくれないかい?」
 彼の手から落ちたスプーンがメープルの床の上を跳ねる。
「君を養子にとりたい。学校にも通わせて、この世界のことを知ってほしいと私は願っているけど、どうかね?」
「嫌だよ。学校なんて行けるわけがない。ヨウシのことはよく分からないけど、僕は、次は誰に買われるの? 引田さんがガッカリしたらまた捨てられるんでしょ?」
「そんなことないよ。私はシャル君と生きていたい。少し愛情表現を間違えてしまったけれど、君の家族になりたいんだ」
 シャルの瞳から大粒の雫が頬を伝う。それは流れるままにシャルは拭おうともしなかった。
「私はシャル君、君のことを愛している。それは変わらないよ」
「待って、引田さん。僕は、商品だよ。引田さんに買われたモノなの。そんなことを言われても信じられるわけないじゃない。セックスしたくせに。僕を貪ったくせに。セックスしたことが間違っていたの? 分かんないよ。僕にはこれしかないのに。」
 シャルの言葉は嗚咽にさえぎられて続かなかった。引田はシャルを抱きしめ、背中をさすった。
「すまなかった。君に触れたいと思ってしまったんだ。君を苦しめると分かっていたはずなのに」
 シャルはどうしたら引田に応えられるのか、捨てられないでいる方法が分からなかった。愛されても、自分が愛せなかったらいつか見捨てられると潜在的な恐怖心が頭を埋めた。
「僕はどうしたらいいの……空っぽな『シャル』なのに。どうやって僕は引田さんに応えたらいいの?」
「そうだな、これが正しいのかは分からないけれど、キス、してくれないかい?」
 飼い主が望むなら、とシャルは唇を寄せる。柔らかな唇が合わさる。甘くない、無味なキス。そのはずなのに、シャルは胸の中が熱で満たされる。熱い舌が唇を割り、口腔で絡み合う。どんな客とも違う、慈しむような口付けだった。
「キスは一人じゃできない。暴言を浴びせ、噛みつくことだってできる口を合わせる。それがどれだけ優しいことか知っているかい?」
「引田さんも、性しか知らないんだね」
 シャルはやっと涙を拭って笑った。
「私と一緒に愛を知ってはくれないかい?」
 二人はどちらからでもなく、何度も口付けを交わした。

 引田とシャルは初めて、セックスをしないで同じベッドで眠りについた。自室で寝ればいいのにと引田は言ったが、シャルは一人で眠りたくはないと拒んだ。腕の中で眠るシャルの瞼に、引田は小さくキスをした。

 それから一週間の月日が流れた。



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北原さん再登場です。お待たせしました。
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2016/02/02 (火)
vanilla