青嵐吹くときに君は微笑む 07

 食後、酒本先輩は滴をこっちこっちとリビングの戸棚に呼んだ。俺は雪の六角模様が描かれたこたつの中に入る。戸棚の上の男二人に挟まれた先輩の写真。あれがどうにも引っかかったが、目の前には木製のお皿に乗ったマドレーヌをいただくことにした。これも手作りなのだろうか。
「開けてみて」
 観音開きのその戸を開けると、滴はひゃあん、なんて奇声を上げていた。
「なになに」
「お、お兄ちゃん、歴代コンサートのDVDどころかファーストコンサートのVHSまで全部揃ってる……」
 戸棚を覗くとずらりとそれらは並んでいた。コンサートだけではなく出演映画やドラマのビデオまであった。この人、すごい。
「どれを見ようか。滴ちゃんはどれがいい?」
「んーここは十周年記念コンサートがいいです!」
「ふふ、あれ素敵だもんね」
 人々が会場に集まる。ドームよりさらに多くの人々が。そして、物語の始まりを告げるビデオに人々のボルテージは最高潮に達した。
 こたつの中で、先輩は何故か滴から離れて俺の近くに座っていた。
「そういえば、自己紹介していなかったね」
 彼らの歌声をバックに酒本先輩が切り出す。
「酒本渚です。県立の美術大学でデザインを学んでいます。零くんとは高校で部活が一緒だったね。担当はリーダーです。どうぞよろしくお願いします」
 先輩は左右の俺たちにそれぞれ頭を下げた。ふわりとシトラスの香りがする。
 ピリピリする緊張の中、息を深く吸って、話し始める。
「じゃあ、俺は相原零です。高校二年生です。酒本先輩と同じバスケ部です。この前のコンサートは、その、感動しました。あんなに輝いている人が目の前にいるなんて信じられませんでした。よろしくお願いします」
 そっかそっか、と先輩は俺に笑いかけた。
「お兄ちゃんもついにアイドルの良さが分かってしまったか」なんて滴に言われたが、エンターテイナーとして感動したのは事実だ。今もテレビから流れてくるコンサート映像に、ペンライトの星の海の中を泳ぐ彼らと音楽に心が躍って仕方なかった。
「最後は私だね。相原零の妹の相原滴です。お兄ちゃんと同じ高校の一年だから酒本先輩の後輩にもなりますね。担当様は私もリーダーです。アイドル好きの友達が少ないので酒本先輩と知りあえて嬉しいです。よろしくお願いします」
 滴が先輩の手を掴むと、先輩は犬に噛まれたかのように手を引いた。
「ごめんなさい、ごめんなさい……なんでもない、よ。うん」
 両手で震える身体を抱きしめた先輩の滴に笑いかけるその声は、なにかおぞましいものに胃を掴まれたように震えていた。
「先輩、大丈夫ですか?」
 俺は慌てて先輩の震える肩を掴む。浅い呼吸を飲み込んで、酒本先輩はまた笑う。
「うん、大丈夫、ちょっとびっくりしただけだから。ね、ほら、リーダーのソロ曲だよ」
 画面に流れる非日常はどこか寂しくて、自己紹介だけでは語り切れない「酒本渚」という人物が何者なのか俺たちに疑問を残すだけだった。



お読み頂きありがとうございます。
渚くんに色々背負わせすぎじゃね?と思いつつ書いてます。楽しい。
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2016/11/29 (火)
青嵐吹くときに君は微笑む

音楽の神様

「お姉ちゃんはさ、なんでまだ吹奏楽やっているの?」
 その日はやけに月が大きく、夜空の守り神のような夜だった。
 必要最低限のもの以外段ボール箱につめて、殺風景になった妹の部屋にはもうカーテンすらない。月明かりが私たち姉妹をぼんやりと照らしていた。
「なんで、ってそりゃ、好きだからだよ」
「高校ではやれなかったくせに?」
「やれなかったから、だよ」
 私は明日旅立つ妹の肩を抱いた。
 私は小学校から吹奏楽の道に入った。物心つく頃からピアノ教室に通っていた私にはそれは至極当然のことで、何かを始めるのに理由なんてなかったとさえ思う。二つ下の妹も私にくっついて吹奏楽部――尤も小学校では木管楽器のいない金管バンド部だったが――に入部した。パートは私がホルンで、妹はユーフォニアム。二人で吹いている時間は少なかったけれど、楽しいひとときだったと今でも私は思う。
 中学三年生のとき、私は市内の合同バンドでパートトップを任せられた。トップ奏者というのはそれだけ花形で、名誉あるものだった。市内で一番なのが私。その誇りを持って私は演奏した。聴いてくれる人を楽しませるために。
 すると、市外の吹奏楽全国強豪校から私はスカウトされた。大きな舞台で演奏できることを夢見て私は推薦でその高校を受けた。
 でも、私は入部一か月で吹奏楽部をやめた。
「お姉ちゃん、私はレズですって言えばよかったのに」
 口をとがらせて妹は言うけれど、私にそんな勇気はなかった。
 私は高校に入ってから、男の子たちと一緒にいることが多かった。レズビアンであるためか、私の性格故か、女の子と一緒にいると緊張して喋ることができなくなる。だから高校では思いっきり自由になるために男の子たちと楽しい高校生活を送りたかった。私が女とかレズビアンとかそういうことは忘れて。
「言えないよ。言ったらもっとこじれていたかもしれないじゃない」
 男の子とばかりいた私は、部内で「ビッチ」「男たらし」「尻軽」と散々な言われようだった。部員は男女交際禁止という部則があったが、男の子たちと恋愛するつもりがなかった私にははた迷惑な規則でしかなかった。最後には顧問から母に「あなたの娘さんはふしだらです」なんて電話がかかってくるくらいだった。
 先輩には「もうすこし男子と距離を置きなさい」と忠告されたけれど、私の居場所はすでに男の子たちの中で、そこから離れたらどこに行けばいいのか分からなかった。
「それでいたたまれなくなって退部と」
「いたたまれないとか、そんな程度じゃないよ。音楽が、怖くなったから」
 強豪校は今までの「みんなで素敵な音楽を作り上げる」なんて生ぬるいものじゃなかった。全員がライバルで、誰かを蹴落とすための道具。悪口も、視線も、嫌がらせも、全部、自分が舞台に立つため。
 でも、本当にそれでいいの?
 ある日、私は部室でうずくまって動けなくなった。

 息ができない。
 吸えない。
 吐けない。
 吹けない。

 震えて音が出なくなった。

「それじゃあなんで、今やってるの? 高校であんなだったのに」
 妹は私と同じ高校で、全国大会に出場し金賞を受賞した。
 妹はあの環境でも屈しない強さを持っていた。私にはないものを。
「あんなだから、だよ。お姉ちゃんさ、知ってしまったんだ。吹奏楽の楽しさを」
 月夜を眺めながら、私は反芻する。
「小学校での演奏、覚えている? 学芸会のとき、たくさんのお客さんが私たちの演奏に拍手をくれた。それが嬉しくてたまらなかった」
「私だってそりゃ拍手もらえたら嬉しいよ」
「それだけじゃないんだ。私はまだ満足するほど音楽をやっていない。悔しかった。技術を磨くのは全て聞いてくれる人を喜ばせるためのものであって、競うためのものじゃないって私は信じていたから。私はきっと覚悟がぬるかったんだよ」
 そんな私の妹は、もう吹奏楽はいい。と県外の看護の専門学校に進学する。
「こっち帰ってきたら演奏会来てね。絶対素敵な演奏をするから」
「うん」
 月の中で二人、姉妹最後の夜を過ごす。
 音楽の神様が私を自由にしてくれるのはいつだろう。



お読み頂きありがとうございます。
30000hit記念&自分の誕生日(11/28)記念に書いてみました。
短編を書くのは久しぶりで、どうやって書くんだっけなんて悪戦苦闘しました。
僕は自由になりたいです。
たくさんの訪問、いつもありがとうございます。21歳の僕もよろしくお願いいたします。

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2016/11/25 (金)
短編集

青嵐吹くときに君は微笑む 06

「これって」
「マンションじゃなくて、億ション?」
 コンサートを終えた翌週末。俺と滴は酒本先輩の案内で先輩の自宅に来ていた。
 目の前には高くそびえる高層マンション。層だけじゃなくて絶対家賃も高いやつ。俺と滴は寒さとは別の何かで震えていた。
「さあ、入って」
 エントランスにカードキーをかざしてエレベーターに乗り込む。割と上の方の十四階で止まる。
 アルコープを歩いて角の部屋に案内される。
「そんなに広くないけどごめんね」
 いえ、玄関がすでに広いです。俺らの家の玄関の倍はあります。
 玄関からまっすぐ廊下を進むとそれはまた広いリビングに出た。青と白を基調としたインテリアに小さな白いLEDのクリスマスツリー。大型のテレビの横には青のペンキで塗装されたシャービックな戸棚。戸棚の上には写真が飾られていた。酒本先輩と一緒のこの二人の男性は誰だろう。
 ともかく、モデルルームのようにシンプルかつおしゃれな部屋に俺たちは完全に緊張で小さくなっていた。
「そんな緊張しなくていいよ、僕たちしかいないんだから」
「えっ、一人暮らしなんですか?」
 滴がすかさず問う。この広さで? という意味合いが強い。
「うん、一人暮らしだよ。両親はもういないからね」
 しまった、という顔を滴がする。気にしないで、酒本先輩は笑ってみせた。よかった、先週よりは元気そうだ。
「じゃあご飯にしようか。二人ともお腹空いているでしょ」

 コートを脱いで預けると、俺たちはリビングに隣接するダイニングキッチンの四人掛けのテーブルに腰掛けた。俺の横に滴。俺の正面に酒本先輩だ。
 そして目の前には牛スジ肉のシチューライスとニンジンのマリネ、タコのペペロンチーノ、アンチョビポテトというあり得なくお洒落な食事が並んでいる。ここはどこ? 先輩の家だよな?
「常備菜ばっかりでごめんね。大学の課題が忙しくて。でも、牛筋肉の煮込みは頑張ったから喜んでくれると嬉しいな」
 いじらしく笑う先輩にときめきつつ俺たちはいただきます、とスプーンをシチューに入れる。一口頬張ると、ほろり、とお肉が溶けた。
「うんまっ!」
「美味しいっ!」
 これは家庭料理のレベルなのだろうか。絶対前日から煮込んでいるやつだ。柔らかな肉の風味と香味野菜の香りがマッチして止まらずバクバク食べてしまう。
「よかった、喜んでくれて」
 ニコニコと酒本先輩も食べ始める。
「あの、酒本先輩は料理人か何かなのですか?」
 興奮気味の妹の滴が問う。
「ううん。ただの大学生。僕、昔から家に両親がいることが少なくて、自分で料理しているうちに覚えたんだ。それに自炊してお金浮かせて貢ぎたいじゃない? コンサートとかCDとかね」
 その言葉に滴は瞳を輝かせる。そのあたりは彼女らに共通するものがあるのだろう。
「分かります! 私もCD買うためにおやつ我慢したりします」
「やっぱりするよね」
 キャー、なんて言いながら盛り上がるアイドルオタクたちを尻目に俺は考えていた。こんな広い高級マンションに一人で住んでいて、両親はいなくて、大学にも通っていて、どうやって生計を立てているのだろう。知らないことの多さに頭がクラクラする。
「どうしたの? えっと、相原くんだと被るから、零、くん?」
「ひぇっ!? あっ、はい、なんでも、ないです」
 急に名前を呼ばれて俺はスプーンを皿の上に落とす。酒本先輩の口から俺の名前が出た。そりゃ滴も相原なのだから当然だけれど、衝撃で俺の身体は火照ってしょうがなかった。
「調子悪いなら早めに言ってね。風邪流行っているから」
「そうだよ、お兄ちゃん。先週の私みたいにさ。酒本先輩、先週はありがとうございました。コンサートどうでしたか?」
「滴ちゃん。とっても楽しかったよ。実はリーダーがキスしてたよ」
「えっ、お兄ちゃんそんなこと言ってなかったじゃん! 誰とですか!?」
 言えるわけない。そんな恥ずかしいこと。衝撃だったんだから。
「ふふー、実はねー」
 盛り上がる二人を眺めながら俺は黙々と食べていた。先輩のご飯、美味しいな。



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2016/11/22 (火)
青嵐吹くときに君は微笑む

青嵐吹くときに君は微笑む 05

「いやー、もうっ最高! 最高だったね、相原君!」
 大規模なコンサートというものは規制退場といって、座席ごとに順番に退場する。最後の方だった俺たちがナゴヤドームを出たのは二十三時近く、今は二十四時間営業のファミレスで夜食に近い夕食を取っていた。
 酒本先輩は今日のコンサートの内容についてあれやこれやと語っていた。うんうんと相槌を打っているとなんだか夢みたいで、この人とずっとこうして話していたいと願っていた。
「えっと、待ってね」
 酒本先輩が財布を取り出す。えらく高そうな長財布から俺は無意識に目を逸らす。
「今日のチケット代。妹さんに渡してください。定価取引がルールだからこれだけしか渡せないけど」
 いえ、貰い物だからいいんです、と言っても酒本先輩はルールだからとテーブルに置いた。仕方なく綺麗な千円札の束を俺は言われるがまま受け取る。これは俺も滴にチケット代を請求されるのだろうか。
「そんな顔しないでよ。じゃあ、ご飯は割り勘にしようか」
 気を使われてしまった。でもそんな優しい酒本先輩のことが。……ことが?

 ファミレスを出ると終電間近だった。急いで電車に乗り込む。
 思ったより電車は空いていて、隣に並んで座る。最寄り駅を聞くと同じ駅だった。
「意外とご近所さんだね」
 ふふ、と笑う酒本先輩だったがやはり疲労の色が見えていた。コンサートの前、酒本先輩はどれだけ悲しい思いをさせられたのだろう。そしてどれだけコンサートを楽しめていただろう。胸の中に切り取ってしまっておいたコンサート中のあの笑顔を反芻する。
 乗換を終えるとあとはまっすぐ進むだけだ。足の間にたくさんの宝物が詰まったバッグを置いて、電車で揺られていく。そのうち酒本先輩は船をこぎ始めた。無理もない。もう日付は超えていた。
「先輩、俺の肩で寝ていいですよ」
 ん、とだけ返事をするとコトリと先輩は俺の肩に頭を預けた。小さくて、髪がふんわりとして、少し甘い香りがする。
 この人と一緒に居られるのもあと少し。電車は地下を抜けて夜中の街並みを走った。きらきらと、人工的な星の海を眺めている。林をぬけて、その先の街並みはもうすぐ眠ろうとしていた。
 先輩の手に、そっと手を重ねてみる。小さくて、きめ細やかな肌で、あったかくて。憧れの人がこんなに小さくか弱く存在していることに、俺はどんな言葉でこの感情を表せばよいだろうか。
――――父さん。
 聞き間違いだったかもしれない。酒本先輩がそう言った気がして顔を見下ろすと、両目の端から透明の雫が滲んでいた。
 それは暖かな頬に銀の筋を描いて二人の間に落ちる。
 この人を苦しませているものは一体何なのだろう。そして、それは俺が踏み込んでいい領域の話なのだろうか。
 電車に揺られながら、俺の心まで揺さぶられていた。

「相原君、今日はありがとうね」
 最寄り駅の階段を上ると、ロータリーで俺たちは別れを告げた。
「こちらこそ、楽しかったです」
 じゃあ、と立ち去ろうとする酒本先輩の腕を、俺は考えもなしに掴んでいた。
「あの」
 考えろ、考えろ。
「また、会えませんか?」
 この人と居るために。
「その、妹が、きっとお礼したいだろうし。その、アイドルの話とかしてやってほしいんです」
 咄嗟に出た言葉に、先輩は「うん、いいよ」
 爽やかな五月の緑のような微笑みを見せてくれた。



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渚くん(酒本先輩)を泣かせた奴をフライパンでぶん殴りたい作者です。
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2016/11/15 (火)
青嵐吹くときに君は微笑む

Vanilla ice cream

「北原さん、お腹空いた」
 シャルと呼ばれた少年、愛実(つぐみ)はあの小さなアパートに来ていた。壁には雑多に段ボールが詰まれ、小さなテレビとくたびれた紺色の布団のかけられたパイプベッドがあるだけの小さな部屋。シャルだったころと全く変わらない、薄汚れた安心感のある部屋だ。
「ああ? 真琴のとこのチビに作ってもらえよ」
「絢介のご飯も美味しいんだけど、たまにはパパと食べたいなー」
『チビ』『絢介』と呼ばれているのは愛実が今、住んでいる引田邸の使用人のことだ。
「けっ、こんなときだけ『パパ』かよ」
 きつい言葉とは裏腹に北原の口元は緩んでいた。
「大体、何勝手に帰ってきてるんだ愛実。昔みたいに縛り上げて抱かれたいか?」
 ベッドに背を預けてテレビを見ている北原は、愛実に背を向けたまま言葉だけで脅してみせる。
「残念ながら僕は真琴のモノだからパパとはセックスしませーん」
 久しぶりに干した布団の上でケラケラと愛実は笑った。
「じゃあ何で帰ってきたんだ?」
「いつでも帰ってこいって言ったのはパパの方でしょ?」
 愛実は枕を抱きかかえて妖艶な瞳を輝かせる。
「まさかとは言わないが、『道具』を買いに来たんじゃないよな?」
「大正解!」
 はあ、と北原は「血は争えないな」と息を吐く。
 SMクラブの支配人をしている北原はパフォーマーやコアな顧客相手に性具の販売仲介もしていた。
「真琴のセックスって甘いだけで、その、マンネリ?ってやつ」
「マンネリねぇ……真琴はセックス下手そうだしな」
 北原はテレビを切るとベランダに出て巻き煙草に火をつけた。冬の訪れを感じる風が煙をたなびかせる。
「下手というか、ノーマル? キスして解してつっこんで出して終わり」
 愛実は北原から自分のピアニッシモに北原の煙草から火を奪うと、ニヤリと笑った。
「ノーマルなセックスで満足できないお前もお前だな」
「もう骨を折られるのは嫌だけどさ、首絞められるくらいはしたい」
「そう真琴に言ってやれよ」
 北原は短くなった煙草を水を張ったベランダのバケツに放り投げると、愛実の髪をすいて室内に戻る。
「言ったんだけど、傷つけたくないとかなんとか。というわけで、ロープと媚薬くらいあるでしょ? パパ?」
「だからその『パパ』ってのやめろ、むず痒い」
 吸い終えた愛実も同様に放り投げて室内でガムを噛み始める。
「大体、ロープ持って行ったって真琴は縛り方知らんだろ?」
 愛実は雌豹の目で微笑む。
「ううん、僕が縛る方」
「真琴もとんでもないのに惚れちまったな」
 末恐ろしい息子だと北原は苦笑した。
「ロープならテレビ横の箱の中だ。どれも中古だが好きなのを持っていけ。でも媚薬はやらん。法に触れるからな」
 釘を刺されて愛実はしょうがなくロープを選ぶ。真琴には赤より元の麻色が似合いそうだ。
「選んだら飯、行くんだろ? たまには、牛丼はどうだ?」
「いいね、卵付きで」
「好きにしろ」
 そのぶっきらぼうな物言いに愛実は嬉しくなる。なんだかんだ北原はシャルだった頃から愛実に甘いのだ。
「帰りに北原さんも家に寄って行ってよ。真琴がたまにはおいでってさ」
「どうせアイツは仕事で居ないんだろ?」
「それが、実は会いたがってるのは絢介の方でさ」
「あのチビが?」
「まだ僕の勘だけど北原さんが来ると絢介がそわそわするんだよ」
 ヒメゴトを語る女子高生みたいに、玄関で靴を履きながら耳打ちする。
「絢介、多分北原さんのことタイプだよ」
「悪趣味なチビだな。まあ、寄るとするか。恋敵の父に惚れる男も面白いじゃないか」
「北原さんも十分悪趣味だね」
 くっく、と二人で顔を見合わせて笑うと、二人は繁華街の端のアパートの階段を降りた。
「あのチビ、今まで付き合ったことある奴いるのか?」
 徒歩数分の牛丼屋に入ると二人はカウンター席でそれぞれ注文した。
「ううん、ずっと真琴一筋」
「じゃあ童貞か。あの年で」
「北原さん、イジめすぎちゃダメだよ?」
 それは可愛がれという意味に北原には聞こえた。
「そんなこと言って愛実こそあのチビと仲良くしてんのか?」
 注文するとすぐに出てくるのが牛丼屋の良さだ。
 カウンターで並んでいると、この繁華街では誰もこの二人のことを親子だと思わないだろう。おっさんと買われた男。その関係だったのはもう昔のことだった。
「仲良しだよ。色々あったけどね。絢介も僕もいっぱい泣いた」
 北原はそっか、と髪を撫でた。
 北原は深くは聞かず、愛実も語らず、牛丼屋を後にした。
「お土産、何かいるか?」
 大通りへの道すがら、二人はコンビニに立ち寄った。
「んー、ポテチ食べたい。コンソメね」
 それはお前の食べたいものだろ、と愛実の小脇をつついた。心のくすぐったさに愛実は笑う。
「いいんだよ。甘いものはいくらでも真琴が持って帰ってくるんだもん」
「あいつそれでよく腹が出ないな」
「社内に社員専用ジムを作ったんだってさ。おかげで真琴はかなりムキムキ」
「ほう? 流石社長様はやることが違いますね」
 揶揄するように北原は笑うとコンソメ味のポテチと1Lのコーラを掴んでレジで会計を済ます。 大通りに出るとタクシーを捕まえて、引田邸の住所を伝えた。
「僕もジム使っていいって言われたけどムキムキになるつもりはないかな」
「お前はいくら食べても細っこいからな。ダイエットなんかしてないよな?」
「少しはね。少年の美しさは無駄な脂肪も筋肉もない直線美にある」
「ショーに出るわけでもないのに相変わらず徹底してやがるな」
 引田の家までタクシーで向かいながら言う。
「僕にとってセックスはショーだから」
 ほう? と北原は口角を上げる。
「今までは数多の知らないおじさんたちを見下して、僕の美貌で従えてた。でも今は違う。好きな人にベストな僕を見てもらう。それが今のセックス」
「プロ意識だけはいっちょ前だな」
「だけ、って何さ」
 愛実は頬を膨らませたがすぐに笑い出してしまった。
「もう少しあれだな、気を抜いてもいいんじゃないか?」
 北原は無精髭を掻く。
「そうかな? 一番綺麗な僕を知っているのが真琴であってほしいだけだよ」
「真琴もなんだかんだ愛されてるな」
 後部座席で愛実は北原の肩に頭を乗せた。
「これが僕の愛の形だよ。空っぽじゃなくなった僕の」
 小高い丘にある高級住宅街、愛実の住まう引田邸に二人は降り立つ。
 引田の私用車と萩野の車に並んで、引田の社用車がある。
「真琴、今日は帰り早いね」
「アイツ、鼻だけはいいからな」
 ただいま、と玄関を開けると高い天井のロビーで二人が出向かえる。
「おかえり、誠司も一緒だったか」
「たまには顔出せって言ったのはお前だろ?」
 ほれ、土産だ、と北原はコンビニの袋をあえて萩野に差し出す。 萩野は一瞬目を見開いて受け取った。切り揃えられた前髪で見えなかったが、俯いたその瞳は熱で揺れていただろう。
「北原さんの意地悪」
 愛実は小さな声で、愉快そうにつぶやいた。

 広いリビングの一角、応接間となっているスペースで四人は膝を突き合わせた。
 ご丁寧にコンビニのポテチを花柄のボウルに入れて、グラスでコーラを飲む。なんともアンバランスだ。
「久しぶりに誠司に会えてよかったな、愛実」
 二人を前にしても遠慮なく引田は愛実の頬を撫でる。頬に火をともす愛実を見て、誠司は安心するものがあった。
「ふふ、パパとご飯食べたりして楽しかったよ」
「そうだな、真琴に『おみやげ』があるらしいから楽しみにしてな」
 もう、言わないでよ。と愛実は北原を睨んだ。
「それは楽しみだな」
 楽しみにしない方がいいぞ、と北原は心の中でほくそ笑んだ。
「でも相変わらずパパのアパートは散らかってるよね。今日布団は干したけど」
「めんどくせぇんだよ。生活できればいいんだよ」
「じゃあさ、僕と絢介で片付けに行こうか?」
「僕もですか!?」
 急に白羽の矢が立った萩野が驚いた声を出す。
「絢介ならお掃除得意だし、人数多い方が速く済むでしょう?」
 目配せで別の意図を読み取った北原はこれは愉快と口の端で笑う。
「じゃあ、頼まれてくれるか? ディルドとか鞭とか転がってるけどな」
「でぃ、る……!?」
 北原の揶揄に耳まで真っ赤にした萩野のことを、うっかり北原は可愛いなんて思ってしまった。
「真琴、いいでしょ?」
「萩野がいいなら行ってきなさい。家のことは簡単に済ましてしまっていいから」
「ありがとうございます!」
 何のお礼だよ、と北原と愛実は笑った。

 その日のディナーは萩野特性の鴨のテリーヌだった。そして引田からは自社製品のバニラアイスが振る舞われた。
「パパ、絢介のこと、どう?」
 北原の帰り際、愛実が耳打ちする。
「どうって、いいんじゃないか? 売りはしないけどな」
「そりゃ僕より大切にしてるじゃない」
 顔を見合わせて笑う親子は、やはりどこかいびつで愛しい二人であった。



お読み頂きありがとうございます。
Twitterのいいねの数だけ会話文を書くというタグで書いていた物語に肉付けをして一つの小説にしました。
ぐだぐだ書いたので山もオチもありません。ただ北原と愛実(シャル)が可愛くてだらだら書きました。
本編後のお話ですので、本編はまだ!という方はこの機会にいかがですか?
長々と書きましたがありがとうございました。
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2016/11/11 (金)
vanilla

佐久間姉弟の事情 01 冬の夜と春の朝

「早織(さおり)、痛くない?」
 木製の低い二段ベッドの下。聡(さとる)は彼女に覆いかぶさり、潤んだ長く黒い髪を撫でた。早織は自らの中心を押し広げられる圧迫感に、彼の背にしがみついた。恐ろしいものから守られたいとばかりに。
「処女じゃあるまいし、痛くは無いって。でも、もう少しこうしていて」
 早織はしっとりとした聡の肩に頬を埋めた。真冬の一月三十一日。電気ストーブだけがこの部屋を暖める酷く寒い夜。熱を求めるのは動物として当然かもしれない。
――――でも彼女たちは人間としては当然ではなかった。
「姉ちゃん、オレ、高校受かるかな」
 早織のことを『姉ちゃん』と呼ぶのは聡だった。弱気な声に早織は抱きしめる力を更に強めた。
「大丈夫。聡は私の『弟』なのだから。過去問も満点だったでしょう?」
「オレ、姉ちゃんと同じ高校じゃなかったら高校行かない」
 そんなこと言わないの、と早織は聡の柔らかな黒髪を慈しむように撫でた。潤んだ双眸は不安と熱で揺れていた。何かの引力で引き寄せられるように唇を合わせる。それが合図だった。
 聡は早織の全てを奪うように腰を穿った。早織は自らの腕を噛んで声を殺す。しかし甘い吐息は律動の度に鼻から抜けて漏れだした。
「早織」
 聡は早織の腕を掴んで手をシーツに押し付けると、唇で彼女の口を塞いだ。熱い舌で彼女の声の全てを飲み込むように。
「んっ、んっ」
 彼女の中が締まる。奥のお腹側。それが早織の弱点だった。執拗にそこを圧迫すると早織の声は一段と高いものになった。
「早織、可愛いよ。世界で一番可愛い」
 掠れた男のささやきに早織は聡の首に腕を回してキスで答えた。聡が熱い。真冬の冷たさから逃げるようにお互いを貪り合った。いつか終わりが来るまで。

「姉ちゃんさ、やっぱりお腹側弱いよね」
 白濁液の溜まったコンドームと濡れたティッシュをゴミ箱の奥に隠して寝転ぶ。貰い物の木製の古臭い二段ベッドの下段。中学三年生の聡と高校二年生の早織の二人が並ぶには少々狭かった。
「いいじゃない、開発されたってことで」
 汗でひんやりとした聡の胸に頬を寄せると、きめ細やかな肌が吸いつく。こんな真冬でもセックスの後は暑いと聡は言うが、早織は性の名残でお腹が冷えて仕方なかった。腰まで羽毛布団を被って気だるさが眠気に変わる瞬間を待っていた。
「姉ちゃん、明日は合格発表だね」
 そうだね。と半分眠りに落ちた早織が答える。
「試験の翌日に合格通知が届くってことは、試験中には合格通知をもう送っちゃっているって。私立の推薦なんて全員受かるから。私のときもそうだったし」
 聡の頬に手を添える。艶のある黒髪にくっきりした目鼻立ち。筋肉質だけれど細い体。長い手足。これでも一応、人気雑誌の読者モデルなんてしている。
「芸能科のある高校じゃなくてよかったの? お母さんがお金の心配はしなくていいって言っていたのに」
 ううん、と聡は首を振る。
「姉ちゃんと一緒に高校通ってみたかったんだ。それに奨学金もらえるし」
「そっか」
 柔らかな唇にもう一度触れて、早織は頭まで布団を被った。
――――聡は私の可愛い弟だから。
「姉ちゃん、上戻らないと母さんに見つかるよ」
 その言葉はもう早織には届いていなかった。
 早織はそのまま眠りについた。その日は悲しい夢を見た気がする。

「姉ちゃん!」
 季節は廻り、四月。聡は早織と同じ私立高校に入学した。
「聡、早くしないとホームルーム始まるよ」
 高校三年生になった早織と高校一年生になった聡。
 まだホームルームまでは三十分もあるというのにどういうことかと聡が首を傾げていると、
「あの! もしかしてモデルの佐久間聡さんですか?」
「はい、そうで――」
 返事の途中で黄色い悲鳴が上がる。気付けば廊下に女子生徒の人だまりができていた。
「姉ちゃん助けて」という言葉も虚しく。
「佐久間早織さん! 今日もお美しいですね」
「はーい。みんなありがとー!」
 早織の周りにもたくさんの人が集まっていた。笑顔で返事をする早織は、それはもう美しくて。
「えっ、姉ちゃん?」
「ほら、急がないとダメでしょ?」
 早織は聡の腕を引いて抱きとめる。
「こちらは私の弟の聡です。みんな、可愛がってあげてね」
 黄色い悲鳴と、男子生徒たちの羨望と。
 でも誰も知りはしない。佐久間姉弟がセックスをしていることを。



お読み頂きありがとうございます。
「美少年×美少女のラブラブえっちが読みてえええええ」と叫んでいたら僕が書くことになりました。自給自足大事。
なんで近親相姦になったんだろう。僕にも分からない。
楽しくレッツセックス!な小説にしていきますので何卒お付き合いのほどよろしくお願いいたします。
不定週木曜21時更新です。どうぞお楽しみに!
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2016/11/10 (木)
佐久間姉弟の事情

佐久間姉弟の事情

姉の早織(さおり)は学校一の美少女。弟の聡(さとる)は読者モデル。そんな美男美女姉弟の秘密。それはお互いのことを性的な目で見ていること。隙あらば性に溺れる二人を描いた短編集。
木曜21時不定期更新。
全編R18です。

本編

01 冬の夜と春の朝
02 春の訪れ


番外編

雷雨の屋根の下で  Twitter小説|雷雨|切なさ


資料集

ネタバレ要素を含みますのでご注意ください。

登場人物

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  • 佐久間早織(さくまさおり)
  • 佐久間聡(さくまさとる)




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2016/11/10 (木)
novel

青嵐吹くときに君は微笑む 04

「キャー! リーダー! リーダーのビジュ仕上がってる!!! ねえ、相原くんすごいよ! 美しいよ! 尊いよ!」
 えー、無言とは言いましたが、列を抜けて売り場が見えると酒本先輩のテンションがクソが付くほどのアイドルオタクである俺の妹を彷彿とさせる上がりっぷりを見せております。同一人物ですよね? 確認しますが。
「どれ買おう……いや、全部は買うよ? あーでも予算がー。今年のTシャツ可愛いし……はっ、参戦するんだからペンラ買わなきゃ」
 忙しなく興奮の言葉を吐き出す先輩を見ていると、やっぱりこの人は可愛いのだと思ってしまう。木の実を前にした小動物的な可愛さだ。
 俺は妹の滴から預かったメモと別財布を取り出す。えっと、どこで買えばいいんだ?
「えっとね、相原君。ブースごとに買えるグッズが違うから気をつけてね。赤の矢印で区切られてるゾーンまでは同じものが買えるから好きなところに並んでね。じゃ、出口待ち合わせで!」
 早口で説明すると、先輩は比較的人が少なそうな列に並び始めた。俺も付いて隣の列に並んでみる。
 滴のおつかいメモの量もすごかったが、横を見ると先輩もものすごく買っていた。アイドルの経済効果怖い。
 計三回並んで指定されたグッズを全て買い終えた。先輩も鞄からポスターが二本出ていてご満悦の様子だ。漫画ならば顔の周りに花が飛んでいる。至福の時という顔だ。
「さて、コンサート行きましょうか、相原君!」
 初めての世界の扉が開く。思いがけない形で、思いがけない人と共に。

「名古屋調子はどうだー!!!」
「いえーい!!!」
「今から俺ら五人がお前らを幸せにしてやるよ」
「きゃああああああ」
 えー、すごいです。すごい盛り上がりです。何がすごいって、コンサート前に流れるちょっとしたビデオが流れた時点で黄色い悲鳴でドームの天井が張り裂けそうになっていました。そして横を見ると、酒本先輩が号泣していました。苦しかったものを全て洗い流すような涙に、俺は安心と苦しさで身が引き裂かれそうでした。彼らが登場すると、テレビでしか見たこと無かった人たちが実在していることに俺は魔法にかかったような気持ちになりました。彼らの一挙一動に歓声が上がります。驚きすぎで丁寧口調でレポートするほど圧倒されています。現場からのレポートは以上です。
 俺たちの座席は一階席三塁側の後ろの方だった。薄暗いドームの中に眩しい月の如く照らされる五人の姿。曲に合わせてなんとなくペンライトを振っていたが、いつしか夢中になって彼らの姿を見ていた。
 大画面に映し出される彼らの生の姿に俺は言葉を失う。どんな言葉を使っても言い表せないほどの「かっこよさ」が、そこにはあって、エンターテイメントという魔法に俺たちはかかっている。なんだ、これは。
 そのとき、メンバー同士がなんと、キスをした。頬にとか、額に、とかではなく、向かい合って唇に。先程までとは違う色の歓声が上がる。確認するが彼らは男性同士だ。
酒本先輩の言葉を思い出す。
『――男の人なの』
 アイドル業界ではよくあることなのだろうか? いや、俺が知らないだけでこの広い世の中ではよくあることなのだろうか。
 俺は酒本先輩とキス、できるだろうか。
 続いてポップチューンを彼らが歌っている間、俺は酒本先輩の顔をそっと盗み見た。
 刹那、体中を鮮烈な刺激が駆け巡る。足の先から心臓まで。
 俺の求めていた酒本渚がそこにはいた。満面の、花が咲くような輝かしく懐かしい笑み。
「先輩、俺に、もう一度微笑んでください」
 ステージの爆音と黄色い歓声で誰にも聞こえないつぶやきは、俺のせめてもの願いだった。



お読み頂きありがとうございます。
コンサートシーンをいかにぼかすかにかけました。ご本人様ごめんなさい。
でも彼らがいつもコンサートで言う「今から幸せにしてやるよ」という言葉は創作の中で僕も大切にしています。
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2016/11/08 (火)
青嵐吹くときに君は微笑む

不定期新作はじめます

こんばんは、佐倉愛斗です。
「青嵐吹くときに君は微笑む」をお楽しみいただいているでしょうか。
まだまだ序章ですが、物語が動き始めています。どうぞゆるりと楽しんでいってくださいね。


本題です。
昨日、思いつきで「美少年×美少女のらぶらぶエッチが読みたい!!!」と叫んでいたところ
「お前がママ(原作者)になるんだよ!!」と複数の方に言われました。
いわゆる自炊ですね、分かります。
というわけで色々と案を練って書くことにしました。

タイトルは「佐久間姉弟の事情」
姉弟NL。何故近親相姦にしたよ僕。

学校一の美貌でちやほやされるのが大好きな姉、佐久間早織と
女嫌いで読者モデルでシスコンの弟、佐久間聡の
冷めているようで熱い二人の性を描きます。

連作短編ということで不定期更新となります。
セフレ関係から始まるこの姉弟の行く末は如何に。

初回は今週木曜21時に掲載します。
えっちなものが書きたくなったら書くよ!

どうぞこちらもよろしくお願いいたします。
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2016/11/07 (月)
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名古屋コミティア49お疲れさまでした

こんばんは、佐倉愛斗です。
青嵐第3話楽しんでくださっているでしょうか。書いていてとても楽しくなる子たちです。暗い過去を背負った美少年好きです。(性癖)

さて、先日、10月30日は名古屋コミティア49でした。
IMAG0364.jpg
となりに相方のしゃちほこという名のたい焼きがいますがお気になさらず。

スペースにお越しくださった皆様、本当にありがとうございました。
まさかの新刊持ち込み分完売という……もっと持っていけばよかったですね、申し訳ないです。
そして無料配布冊子少なすぎ問題。次回はもっと刷ります。大反省。
貰っていってくださった方々、本当にありがとうございました。是非物語を楽しんでくださいね!

話しかけてくださることも増えて、いっぱいお話しできて楽しかったです。
素敵なお誘いもいくつかいただきまして恐縮です。連絡お待ちしております。


いっぱい本が旅立っていったのに、帰りの方が荷物が重い気がする。それがコミティア。
IMAG0365.jpg
お買い物も楽しめました!素敵な本に出会えて幸せです。
サインもいくつかいただいてしまって嬉しい限りです。またゆっくり読んでラブレター送りますね!

とても楽しい1日になりました。本当にありがとうございました。


名古屋コミティア49にて頒布した新刊の通販を開始しました。
運命を感じたときにご利用ください。
BOOTH-渇き

それでは、次は名古屋コミティア50かな?
ゆるゆる活動頑張っていきます!
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2016/11/01 (火)
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青嵐吹くときに君は微笑む 03

「コンサート……って、相原くんチケット持ってるの?」
 酒本先輩の目が一瞬輝いたように見えた。先輩が俺の手を握って迫る。こうやって見ると酒本先輩はやはり小柄だ。
「はい、妹がインフルで、代理で見に来ました。一枚余っているんですけど来ますか?」
 先輩は小さな声で、こんな僕にもいいこともあるね、と俺に聞こえない声で呟いた。
「是非! 一緒に入らせてください」
 あれ、もしかしてだけれど、酒本先輩って、アイドル好き……?

 グッズをまだ買っていないと俺が告げると、酒本先輩の案内でグッズ売り場に到着した。デッキから見えていた巨大な売り場には人がたくさん、それはもうたくさん並んでいた。数えることを途中で投げ出すに決まっている人数だ。
 俺の横に酒本先輩がいる。あの部活動紹介の日のことを鮮明に覚えている。俺の憧れの人。でも、何も届けられなかった人。
 バスケ部エースとして活躍したあの人が、今では涙を枯らして俺の隣にいる。何とかして話しかけようと彼の方を見る。
 青いスニーカーに青緑のチノパン。ロング丈のキャメルのダッフルコートに青いニット帽。耳に光るのは青い小さな石。どっからどう見ても俺の妹を思い出さざるを得ない。
「酒本先輩は、その、担当様? とかいるんですか?」
「担当? 担当はリーダーだよ」
 ですよね。その色は。
「俺の妹もリーダーが好きなんですよ。二〇〇八年のドラマが良かったとかなんとか」
「ほほー。妹さんはそこが入り口でしたか」
 ニコニコと笑ってみせるが、どこか悲しい。あの日の輝きがない。何故だろう。何が先輩に無理をさせているのだろうか。
「先輩は今日、なんでここに来たんですか?」
 聞いてしまった。聞いてもよかったのだろうか。でも一度出た言葉は戻らない。
 酒本先輩はぽつりとつぶやいた。
「今日、振られちゃったんだぁ」
 俺に向けた笑顔は目尻が赤く、到底微笑みと呼べるものではなかった。胸の真ん中が握り潰されるような、苦しさと切なさで俺は言葉を失った。
「愛してるって言われたから、僕も好きになった。なのに、最後には『ウザったい』だってさ。信じちゃダメだったのかな。何がいけなかったんだろう」
 最後に、えへへ、と彼は髪の端を摘んで文字だけの笑いを作った。人の波の中で、俺達はグッズを求める大勢とぶつからないように歩いている。でも誰かに触れるというのは、最後には傷つけられるものなのだろう。
「その、女の人って残酷なこと言いますね」
「ううん、違うの」
 先輩の声は人々の足音で消え入りそうだった。でも俺にだけ聞こえた。
――男の人なの。
 そんな人もいるのだと知ってはいたが、出会うのは初めてだった。だから、それに傷付いた小さな男の子に何を言ったらいいのか分からなかった。
「ごめんね、びっくりさせちゃったかな?」
 黙りこくる俺に、また作りものの笑顔。
「大丈夫です。俺こそすみません。先入観で話して」
「キモチワルイよね、こんな僕」
「そんなことないです!」
 反射的に叫んでいた。
「先輩は、なんでもできて、カッコよくて、可愛くて、優しくて、俺の憧れの先輩です!」
 俺は酒本先輩の華奢な肩を掴んだ。彼の枯れた瞳に泣いている俺の顔が映っていた。
 この人を泣かせた人を俺は許せないと心から思った。キラキラしてて、明るくて、誰にでも優しくて。そんな酒本渚はどこへいったのだ。憧れとはそれほどまでに強いものなのだと痛感した。
「相原くん、その、前」
 人波をせき止めていたことに気付き、酒本先輩は俺の左腕を引いた。小走りで詰めて離そうとした彼の手を、俺は離さなかった。手袋越しの小さな手を、離してはいけないと、俺は俺に言った。
――さっきは、ありがとう。
 その一言を先輩が言った気がしたけれど、やはりこの人波じゃ聞き取るのは難しかった。俺達は人の波に無言で流され続けた。抗うことなど、考えることを放棄して。



お読み頂きありがとうございます。
コメディなのかシリアスなのか分からなくなってきましたが、笑顔の裏に潜む闇に萌えるタイプの腐男子です。
毎週火曜21時更新です。毎週更新できるように頑張るぞい!
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2016/11/01 (火)
青嵐吹くときに君は微笑む