2016年振り返り

こんばんは、佐倉愛斗です。
2016年もあと少し。今年の振り返りを少しばかりしていきます。

1月

まずはやっぱり成人式!大人になりました!まだまだクソガキだけどね!
サイトでは「Vanilla」を連載していました。初めての長編ドキドキ。
140字SSも精力的に書いていましたね。
体調面ではメニエール病という耳の病気をしました。初めてERに入りましたよ。
流石1月。喉に餅を詰まらせたおじいちゃんが担ぎ込まれてました。
ジャニーズWESTさんに会うことができて幸せな月でもありました。

2月

連載をしながら場所アンソロジーさまにも寄稿。薄暗いお話を書きました。
月末には「Vanilla」を完結させていました。なかなかやるじゃん僕。
名古屋コミティア48の参加申し込みをしていました。人生初の同人イベント!
ちゃんと書類が届いたか不安でしたね。
そして、サークルカットを作るためにサークルロゴを作った月でもあります。お気に入りです。
またLGBTアンソロジーを発足した月でもあります。頑張りすぎじゃん僕。
メニエール病も落ち着いて月の半ばには耳のお薬なしで生活できるようになっていました。
人生経験的には人生初の選挙(市長選)に行きました。あの紙の書き心地最高。

3月

初めての同人イベントに向けて奮闘していました。
原稿の入稿には苦労しました。カバーは何度も印刷所にNGを出されてクソゥしていましたね。
イベントで必要なもの。例えばポップを立てるイーゼルや額縁、敷布などを揃えることも頑張っていました。
オフでは吹奏楽のコンサートと合唱団のコンサートがありました。多趣味ですね。

4月

やってきました名古屋コミティア48。
始まってみると立ち止って手に取ってくださるかたもいてとても楽しかったです。
目標にしていた各種5冊ずつを達成できたのがとても嬉しかったですね。
オフでは大学の入学式がありました。
入学式で東京に出たついでにジャニーズWESTの濵田くんの舞台にも行きました。ついでて。
また、人生で初めて友人の結婚式に行きました。幸せをたくさんいただいていいものですね。

5月

この月はほぼ創作から離れていました。大学忙しすぎワロタ。
イベントは毎年ボランティアスタッフをしているセクシュアルマイノリティ向けの「NLGR+2016」というイベントに初めてブースで参加しました。
その際に発行したのが初の主催アンソロジーであるLGBTアンソロジー「prism」です。
2日間でものすごく売れました。驚きの驚きです。
様々な性の世界を描いてくださった皆様には感謝のしようがありません。ありがとうございました。
また、いつもお世話になっているセクシュアルマイノリティ向けスペースriseさんに僕の本を置かせていただきました。本当にありがとうございます。

6月

6月は初っ端に腹痛で緊急搬送されてます。何事もありませんでしたが死ぬかと思いました。痛いのはSMだけにしてくれ。
そして徐々に体調を崩して24日から4度目の入院をしました。
アンソロジー寄稿のお約束をしていた方々にはたくさんの心配とご迷惑をおかけしてすみませんでした。

7月

この月は丸々入院生活でした。
入院しながら大学の試験を受けたり、選挙に行ったり。
病棟でのある夜、とんでもないアイディアが降りてきました。
それが後の「噓つきは物語の始まり」です。
寝ないで企画案を練っていたら看護師に怒られましたとさ。

8月

退院してすぐ大学の夏期スクーリングがやってまいりました。
二週間東京で一人暮らししましたがめっちゃ楽しかったです。
友達と毎晩美味しいお店探しをして楽しんでいました。
スクーリング後は「噓つきは物語の始まり」の告知スタートです。ワクワクしていましたね。
オフでは創作系セクマイっ子が集まるお茶会に誘われてたくさんのクリエイターさんと出会うきっかけになりました。

9月

秋の夜長は嘘を語ろう。「噓つきは物語の始まり」の開幕です。
5週にわたってお題小説をみんなで書こうぜ!という企画でしたが、多くの方に楽しんでいただけて本当に楽しかったです。
参加してくださった方々、本当にありがとうございました。
体調的にはこの月から1ヶ月以上熱が下がらないという状態でした。38℃はしんどいて……ご迷惑おかけした方々申し訳ありませんでした。

10月

名古屋コミティア49のあった月でした。
体調もしんどいし家からとても出られる状態ではなかったけれど申し込んでしまったし……と「噓つきは物語の始まり」を編集して本にしてみたところ案外人気で驚きました。
無配雑誌も前回以上に手に取っていただけて嬉しかったです。
また、新たなクリエイター仲間との出会いもあり、大きく前進した月だと思います。
サイトでは現在連載中の「青嵐吹くときに君は微笑む」の連載をスタートしました。
この作品は中学生のときに書いたもののリメイクなので楽しく気軽に書いています。渚君可愛いんじゃ。
オフでは宮藤官九郎脚本の舞台を見に行きました。ぶっ飛んでるけど設定のリンクがすごい。この人すごい。

11月

28日に21歳になりましたいえええい。もう「ハタチです♡」って言えないんだなと少し寂しく思ったりするのです。
創作では継続して青嵐の連載を続けました。こういうストイックなの苦手ですがやればできる子なのです。
また「美男子×美少女のエッチな小説読みたい」とTwitterで叫んでいたら「お前がママになるんだよ!」と言われ単発で書きました。シリーズ化する気満々なのでそのうちネタが貯まったら書きますね。
「Vanilla」の単発短編も書きましたが、やはりこれは続編フラグ……?
また、雨夜アンソロジー様にも寄稿させていただきました。冊子になるのが楽しみです。1月頒布予定らしいです。
オフでは音楽関係のことが多かったです。また、ゴスロリお茶会「ファッションマニア」を立ち上げてお食事会&お買い物会をしました。
「画廊」というものに初めて行ってみて、たくさんの方と知り合うことができて本当に嬉しかったです。
あと忘れてはいけないのは、大野さんのお母さん、いつも産んでくれてありがとう(嵐ファン鉄板ネタ)

12月

今年一番忙しかったのは今月では? やはり師走ですからね。
青嵐の連載の今年分は終了しました。お疲れ自分。読んでくださった皆様ありがとうございます。
そしてLGBTアンソロジー2「虹のカケラ―no rain,no rainbow―」を企画しました。参加してくださる皆様、どうぞよろしくお願いいたします。
オフは芸術関係のことが多かったです。クリエイターズマーケット、我が名は暗黒など多くのクリエイター達と出会うことができました。
クリエイターズマーケットは「再会」が増えましたね。いつも素敵な作品をありがとうございます。
そして一大ニュースは書店デビューですね!古書店BiblioMania様での委託販売を開始しました。夢はここでは終わらない。常にスタートラインだと自分に言い聞かせてこれからも前に進んで参ります。
オフでは嵐さんとジャニーズWESTさんに会えてジャニ充してました。そりゃ忙しいわけだ。

総括

今年は初めてのことばかりでとても充実していました。たくさんの出会いと、たくさんの経験。
本当に楽しい一年でした。
健康面で迷惑をかけてしまうことが多かった年でもあったので、無理せず自分のペースで進めたらと思います。
2017年の目標は、着実に実力を付けること。そして商業デビューすることです。
よい文章はよい読書からとも言います。多読できる年にもしたいですね。
出会ってくださった皆様、支えてくださった皆様、応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
皆様のおかげで今の僕があります。
どうぞ2017年もよろしくお願いいたします。

佐倉愛斗
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2016/12/31 (土)
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青嵐吹くときに君は微笑む 11

 酒本先輩がバスケ部から姿を消したのは夏の大会前の練習試合の後からだ。
 梅雨明けの湿気を帯びた熱気の中、近くの高校の部員がやってきて試合を何度も繰り返した。その日、先輩方のドリンクを用意しながら試合を見学していた俺は、巨人の中で一人華麗に舞う酒本先輩のことを何度も目で追っては手を止めていた。
 なんて美しいのだろう。
 この人に近づきたい。話したい。名前を呼んでもらいたい。見つめられたい。
 そのとき、体育館の板張りに強く打ち付けられる音がした。小さな彼がうずくまって倒れていた。
「酒本先輩!」
 俺は何も考えずに駆け寄っていた。怪我か? 病気か? 騒然とする体育館ではそんなのどうでもよかった。ただこの人を笑顔にできるなら、俺はなんだってする。
「ちょうどいい。相原、酒本を保健室まで連れて行ってくれるか?」
「はい」
 酒本先輩を抱きかかえる。腕の中の彼はずっと小さくて驚くほど軽かった。浅い呼吸を繰り返して、涙を流す先輩。俺はこの人を守ることができるのだろうか。
「お父さん、お母さん、ごめんなさい。ごめんなさい」
 そう、うわごとを繰り返す先輩に、何も分からない俺は抱きしめることしかできなかった。
 保健室のベッドに寝かせて、立ち去ろうとすると体操服の裾を先輩に掴まれる。
「どこ行くの?」
 弱弱しい声。
「どこ、いくの?」
 それは『行かないで』に聞こえた。
「行きませんよ、先輩」
 あのときは分からなかったけれど、今なら分かった気がする。
 この感情は恋だ。

「お兄ちゃん!」
 自宅の最寄り駅で滴と酒本先輩を迎えた。
「滴、おかえり。酒本先輩、大丈夫ですか?」
「うん、もう大丈夫。零くんありがとうね」
 目の端が赤くなった先輩の笑顔に、俺の心がじわりと痛む。
 ペールトーンの夕暮れ空に、ピンクの雲が浮かんでいる。
「それじゃあ、またね」
「はい、先輩、おやすみなさい」
 手を振って、さようならをする。またね、の言葉を残して。
「渚先輩とね、あの後、少しだけ手を繋いだよ」
「そっか」
 兄妹二人の影が住宅街のアスファルトに伸びる。
「お兄ちゃん、私、渚先輩のこと救えるのかな。先輩を笑顔にしたい」
「そっか」
「先輩のこと、傷つけちゃったかな。怖い思いさせちゃったかな」
 滴は、泣いていた。悔しさと、もどかしさと、申し訳なさ。やさしさというエゴに気付かされたことに。
 声を上げて泣く妹を俺は抱きしめた。ヤマアラシのように、抱きしめようとしても傷つけてしまうかもしれない。それでも、俺たちは彼に惹かれてたまらないのだ。まるで呪いのように。
「先輩も滴を傷付けたんじゃないかって心配していたよ」
「そう?」
「うん、だから大丈夫」
 一呼吸おいて、俺も言う。
「お兄ちゃんも、先輩のこと笑顔にしたいよ」
「うん。でも、私のは恋だから」
 俺のも恋だと、言えたらどんなに楽だろう。
 お兄ちゃんは、ずっと前から恋をしていたよ。
 ペールトーンの空はプラネタリウムのスクリーンのように薄紫が宙を覆って、金星が瞬き始めた。

 家に着くころ、酒本先輩からLINEがあった。
「今日はありがとうございました。滴ちゃんには驚かせてしまって申し訳ないです。クリスマスイブに家でパーティーをするので是非二人も来てください。たくさん美味しいもの作って待っています」



お読み頂きありがとうございます。
誰かを救いたいという恋はまるで呪いです。
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2016/12/27 (火)
青嵐吹くときに君は微笑む

青嵐吹くときに君は微笑む 10

 昼間、母お手製のコロッケ乗せオムライスを食べていると、スマートフォンが震えた。
 母からの行儀の悪いとの小言を受け流して画面を開くと滴からオムライスを食べている酒本先輩の写真が送られてきた。
「いいでしょー」
 今日の酒本先輩は前髪を上げてポンパドールにしていた。スプーンいっぱいのとろけるオムライスを頬張りながらカメラを上目遣いで見る先輩は、それはもう最高に可愛らしかった。
「ざんねんでしたー」
 俺も対抗してコロッケ乗せオムライスの画像を送る。卵はお店のようにふわとろではないけれど、こちらにはお惣菜界の重鎮、お肉屋さんのコロッケ様がいるのだ。
 数分後、滴からスタンプが届く。
 今度はチェーンソーで首がはねられるスタンプだった。これまた物騒な。

 それから俺は何をするでもなくこたつでうたた寝をしていた。こたつは魔物だ。直立二足歩行という脳と文明の発達に必要な技能を獲得したというのに、こたつに入れば四足歩行にあっけなく退化する。ツイッターで新作の映画をチェックしたり、スポーツニュースを見ていたりするとそれだけで一日が終わる。まさしく人をダメにする魔物である。
 夢と現の狭間で、心地よい暖かさに身をゆだねる。滴はちゃんと先輩とデートできているのだろうか。この先告白して、付き合って、キスをして。そんな関係になるのだろうか。
――――どうしてそれがどうしようもなく嫌なんだろう。
 刹那、握っていたスマートフォンが震える。画面を開くと、滴からだった。
「お兄ちゃんどうしよう」
「先輩が私を突き飛ばして」
「トイレに入ったきり出てこない」
「私どうしたら」
「何かしちゃったのかな」
 絵文字も何もない、緊迫感のある連投。ただ事じゃないことくらい俺にだって分かる。
「今どこにいる?」
「栄のパルコ」
 距離的に今すぐ迎えに行ける距離ではない。片道一時間はかかる。考えろ、考えるんだ。
「じゃあ近くの男性従業員に事情を話して様子を見てもらっておいで」
「滴はきっと悪くないから。落ち着いて」
 滴から了解のスタンプが届く。非常事態を嘲笑うようなポップなイラストに既読を付けると、俺は酒本先輩に電話をかけた。
 出ない。焦るな。俺がかけてどうこうできることじゃないというのは分かっている。でも。
「――――零くん?」
 酒本先輩の声は涙で枯れていた。
「酒本先輩大丈夫ですか? その、滴からLINEもらって」
「そうだ、滴ちゃん、ごめんなさい、ごめんなさい、僕」
 直後に嘔吐く嫌な声と、想像したくないものが水面に跳ねる音がした。
「滴には男性従業員を呼ぶように伝えました。何かあったのですか?」
「僕、やっぱり、怖くて。でも、滴ちゃんとは仲良くなりたくて。でも、女の人だと思うと足がすくんで。嫌いじゃないの。嫌いになりたくないの。でも、怖い」
 震えた声に嗚咽が混ざって、この人の弱いところからぼろぼろと崩れていくのを電子音から感じた。
「僕ね、昔は女の子と話せたんだよ? 友達もいた。でも、お母さんにゲイだって知られてから変わった。お母さんは僕に『こんな子に育てたつもりはない』『母さんを悲しませないで』って毎晩ヒステリックに罵って、殴りつけた。お父さんは僕がゲイでもいいって言ってくれた。でもそのせいでお母さんに『私から旦那を取るつもり?』って余計酷いことをするようになって……レイプ、されたんだ。熱くて、柔らかくて、熟れた果実の臭いがする女の人に一切関わることが怖くなった。それを知ったお父さんはお母さんと離婚した。僕が壊しちゃったんだ、僕の家族を。ごめんなさい。こんな僕でごめんなさい」
 酒本先輩の姿は今見えない。遠く離れた地で泣いている。小さな、小さな先輩は泣いている。どうしたら俺は先輩の笑顔が見られる?
「そうだ、滴ちゃん。滴ちゃんに謝らなきゃ。ぶつかったときに驚いて突き飛ばしちゃって、怪我してないかな。ごめんなさい。でも、脚が震えて立てなくて」
「大丈夫ですよ。滴だって先輩のこと心配していました。そのうち男性の従業員が来ます。帰り、駅まで迎えにいきますよ」
「うん、零くんありがとう。変な話、しちゃってごめんね」
「いいえ、話してくださってありがとうございました」
 これ以上、先輩にかける言葉が見つからなかった。重たくてどろどろしていて黒いものがお腹の真ん中でぐるぐると回って、こたつの中で掻いた汗が冷えてたまらなかった。



お読み頂きありがとうございます。
ゲイだからってみんな女性恐怖症というわけではないのですよ。
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2016/12/20 (火)
青嵐吹くときに君は微笑む

書店委託販売が始まりました

こんばんは、佐倉愛斗です。
Twitterではすでに報告しましたが、なんと、僕の本が書店に並びました!



書店作家かぁ……ふふふ。
ひとえに皆様の応援のおかげです。本当にありがとうございます。

僕の本を置いてくださったのは、名古屋・栄に最近引っ越してきた古書店BiblioManiaです。
アングラな本からグッズから卒塔婆まで色々素敵なものが置いてある楽しいお店です。
僕のおすすめはパック詰めされたキューピーちゃんです←

置いていただいた本は
・LGBTアンソロジー「prism」
・噓つきは物語の始まり
の二点です。

本当はnamaless colorも持っていくつもりでしたが在庫が残り二冊だったので通販に回します。買えたらラッキーよ(宣伝)
素敵な人のところに届いてくれることを願います。

どうぞ皆様、名古屋まで行くことがありましたら立ち寄ってみてくださいね。
栄駅13番出口から徒歩五分。八百屋さんの上にあります。

次の目標は何処だろう。常にスタートライン。これからも応援のほどよろしくお願いいたします。
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2016/12/20 (火)
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青嵐吹くときに君は微笑む 09

「お兄ちゃん何着ていこう!? 甘めのワンピースだと狙いすぎ? でもズボンじゃ可愛くないし……うーん、もう分かんないよう!」
 今日は酒本邸訪問の次の土曜日。LINEで酒本先輩とのデートを取りつけた妹の滴は朝から騒がしかった。
 そして俺はインフルエンザで寝こんでいてすっかり忘れていたが、酒本先輩は男性とお付き合いするタイプの人間だった。いや、男女両方いける可能性もあるが、そうじゃなかった場合、滴は問答無用でフラれるわけだ。これを言い出すか言い出さないかは非常に迷うところがあるが、先輩のプライバシーを勝手に漏らすのも人としてどうかと思うので言わない。言わないけど、俺の可愛い妹は非常に勝算の低いデートをするわけである。
「お兄ちゃんだったらどんな服の女の子とデートしたい?」
「とりあえずあったかくして行け、今日は冷えるから」
「お洒落は我慢なのー! お兄ちゃんのバカ!」
 そもそも俺の意見など聞くつもりはなく一人で騒いでいるだけなのだ。
 が、俺も落ち着かないものがある。
 そもそも酒本先輩は女性と二人で行動しても平気なのだろうか? あんなに怖がっていたのに。どんなデートになるんだ?
「あーもうこんな時間! 行ってきます!」
 嵐のように騒がしい妹の背中を見送った。さて、どうなることやら。

 スマートフォンが振動してメッセージが届いたことを俺に伝える。
 居間のこたつに潜りながら開くと、酒本先輩からだった。
「滴ちゃんはそろそろ家を出たかな? まだ居るなら今日は冷えるからあったかくしておいでと伝えてください」
 いちいち律儀な先輩である。きっと張り切っている本人には面と向かって言えないのだろう。こういうところが先輩の優しいところだ。
「滴ならさっき家を出ました。あったかくするようには伝えておきました。今日は妹をよろしくお願いします」
 先輩からグッドマークのスタンプが送られてくる。うさぎの可愛らしいイラストだ。
 酒本先輩と滴がデート。悪くはない組み合わせだとは思う。趣味も合うし、可愛らしいし。でも、この胸のざわめきはなんだろう。
 こたつの上から一つみかんを取って皮をむく。白い筋を黙々と取りながら考える。
 先週の怯えた先輩の顔。女性が苦手とか? 男の人が好きな人って大体そうなの?
 答えの出ない問いを嗤うようにスマートフォンが震える。今度は滴からだった。
「渚先輩と電車乗ったよ。先輩めっちゃイケメンで惚れ直しちゃった。だいぶ前から待っててくれたみたいで申し訳ないな。楽しんでくるね」
 はいはい、と適当にクマのスタンプを送りつけて、みかんを口に含む。体温で温くなったそれはさわやかなのに甘くて、まるで酒本先輩みたいな香りがした。先輩は香水をつけているのだろうか。
「酒本先輩って香水つけてんの?」
 おもむろに滴にメッセージを飛ばす。数秒後「つけてるって言ってる」と返信。
「シトラス系好きなの?」
「好きだって」
「みかんは白い筋取る派?」
「取らないって。お兄ちゃんさっきからうるさい」
 ハンマーで殴り潰されるスタンプが届く。なんと物騒な。
 今頃、滴と酒本先輩はうまく話せているのだろうか。胸の真ん中が焦がれるようなこの感覚は、恐らく羨ましいという感情なのだろう。



お読み頂きありがとうございます。
現代モノを書く上でSNSをどう物語に取り入れるか、という課題に取り組み中です。
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2016/12/13 (火)
青嵐吹くときに君は微笑む

青嵐吹くときに君は微笑む 08

「滴ちゃん、いいもの見せてあげるからこっちおいで」
 先輩お手製のマドレーヌをこたつで食べ終わるころには、コンサートDVDも終わっていた。わーとかキャーとか叫んでいたドルオタ二人が十周年の感動的なコメントに泣いていたが、みんなこんな感じなのだろうか。情緒豊かすぎだろこの人たち。
 先輩は宝箱のようにリビングのこたつ横の引き戸を開ける。
「これって」
「うん、僕の秘密基地」
 滴は感極まってその部屋に吸い込まれる。
 文字にならない声を上げて滴は飛び跳ねていた。
 何事かと立ち上がろうとしたが、こたつでのぼせたのか一瞬の眩暈に襲われる。しかしなんとか立ち上がって先輩の秘密基地に足を踏み入れた。
 壁中に彼らのポスター、彼らの顔写真の団扇、アクリルの戸棚には歴代のペンライトにグッズ。本棚にはパンフレットにファンクラブ会報のバックナンバー、そして大量のアルバム。
「すっげえ」
 先輩の「好き」が詰まった部屋に俺は圧倒された。細かく見ていくとポスターごとにやはり年齢の違いが表れていて、彼らも人間なのだということを思い知らされる。
 しかし気になってしまうのはこのグッズ、総額いくらかけているのだろう。訊いたら負けだ。
「これ、まだデビュー前の写真なんだよ」
 先輩が一つアルバムを開いて見せると、そこには若いというより幼い彼らの写真が整頓されて並んでいた。
「す、すごい……リーダーかわいい……」
 言葉を無くす滴の横に俺もしゃがむ。幼い顔立ちに細い身体つき。少年だった彼らは国民的大スターにまで昇りつめた。この写真が撮られたとき、一体誰がそんなことを思っただろうか。
「あっちの棚には歴代のペンライトがあるんだよ」
 そう言われて立ち上がった瞬間、俺の視界が渦を巻いて、ストン、と落ちた。

「んん……」
 目を覚ますと、シトラスと太陽の香りがするベッドの中に居た。頭の中で誰かが鐘を叩いているような痛みとベッドに沈み込む身体の重さに驚く。
 見渡すとシンプルに片付けられた寝室だった。クローゼットと机とベッド。カーテンの色はくすんだネイビー。もう日が傾き始めていて薄暗い。
 壁にクリーニング済のビニールのかけられたスーツがかけられている。サイズがどう見ても酒本先輩のものじゃない。それと、机の上にはくたびれた紙煙草と使い捨てライターがあった。ここは、どこだ?
「零くん起きたかな?」
 酒本先輩は水のペットボトルと体温計を持っていた。
「先輩、俺」
「零くん、酷い熱で倒れたんだよ。多分だけど、滴ちゃんからインフルエンザ貰っちゃったんじゃないかな? ごめんね、僕のベッドに寝かせちゃって」
 はい、お水飲んで、とペットボトルを渡される。飲みながら体温を測ると三十八度六分だった。これはインフルの可能性がある。
「今タクシー呼んでるから、今日はゆっくり家で休んでね。明日病院行っておいで」
 ありがとうございます。と答えて、ぼんやりした頭で問う。
「先輩って煙草吸うんですか?」
「吸わないよ。あそこにあるのは、元カレの」
「そうでしたか」
 これ以上の言葉は見つからなかった。先輩に刺さった棘を抜くのは誰だろう。

「お兄ちゃん! もう、ベッドまで運ぶの大変だったんだからね! 調子悪いなら言ってよ」
「ごめんごめん、自分でも気づかなくて」
 タクシーの窓から見送る先輩に手を振って、帰路に着く。
「ねえ、お兄ちゃん」
 滴は前を向いたまま、言う。
「私、酒本先輩のことが好き」
「アイドル好きだから?」
「違う。酒本先輩、私に触れられてとても怯えていた。誰に対してかは分からないけれど、私にじゃない誰かに『ごめんなさい』を唱え続けていた。だから、私、この人を守りたい」
「そっか」
 熱で回らない頭で妹の告白を聞く。その意味が分かるのは、もう少し先のこと。



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2016/12/06 (火)
青嵐吹くときに君は微笑む

LGBTアンソロジー2「虹のカケラ」

こんばんは、佐倉愛斗です。
寒くなってきましたね。背筋が伸びて鼻の奥がスッとするこの寒さが好きです。
オリオン座を眺めるのが日課となりつつあります。

ではまずは謝辞を。
LGBTアンソロジー「prism」の完売、そして重版ありがとうございます。
たくさんの方に手に取っていただけてとても嬉しいです。
まさか重版することになるとは思わなくて嬉しい悲鳴です。
今月中旬から末あたりに届くと思いますので、入荷した際にはまたTwitterなどでお知らせいたします。
こちらのページより入荷お知らせメールに登録していただくと最も早く連絡がいくと思いますので、ご購入を検討なさっている方はお気軽にご登録ください。(僕にメールアドレスは通知されません)
LGBTアンソロジー「prism」 渇き-BOOTH


本題です。
LGBTアンソロジー2を企画いたしました!
その名も「虹のカケラ-no rain,no rainbow-」
僕らは虹のカケラ。グラデーションの性の中の一人です。
そしてホモフォビア、トランスフォビアなどの暗く雨の降り続く世に終わりを告げる希望の虹が見える世界へ。
そんな思いを込めて名付けました。

今回は「セクシュアルマイノリティ」と「雨」をテーマとした小説を募集します。
前回は此方から参加者に声をかける形でしたが、今回はより多くの方に多様な性の物語を書いていただきたく公募制としました。
12月8日0時から21日23時59分までサイトの申込みフォームより参加応募ができます。
人数が予定数を大幅に超えてしまった場合にはページ数の都合上、申し訳ありませんが抽選とさせていただきます。その点についてはご了承ください。

特設サイトはこちらです。
nizinokakerabannar.png
アンソロジー虹のカケラ
サイト内の「企画詳細」を熟読の上お申し込みください。
虹色の物語を共に描きませんか?どうぞよろしくお願いいたします!
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2016/12/02 (金)
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