140字SS 071~075

071 子供じゃないもん

「ところで僕は君が好き!」
 突拍子もなく彼が言うものだから飲んでいたカフェオレが気管に入ってむせてしまった。
 目をキラキラさせる幼い彼の思いが恋なのか友愛なのかは分からないけれど、ありがとうと頭を撫でた。
 彼はちょっと拗ねて、僕だって男なのに……と呟いた。可愛いなぁもう。




072 腹痛

 お腹が痛い。何か悪いものでも食べただろうか。
 君への鬱憤を飲み込み続けて、皮肉を込めた愛の言葉を噛み砕いて。嫌なものばかりが腹にたまる。
 嫌われたくないとつぐんだ口を開いてしまいたい。
 ああ、お腹が痛い。吐き出したら君はきっといなくなるだろう。苦痛に歪む顔を見た君の優しい顔が恨めしい。




073 やさしさ

「どうして泣くの?」
「貴方が泣かないから代わりに泣いてるんでしょうがっ……」
 貴方は困った笑顔で泣きじゃくる俺の背中をさする。
「僕は悲しくないよ。そりゃ先輩のこと好きだったけど、先輩の奥さんも産まれてくる子どものことも好きなんだ」
 どうしてそんなに貴方は優しいの?




074 掌にキス

 あなたの掌越しのキス
 まだ許してくれないのね
 世界が許してくれなくてもあなたが許してくれたらそれだけでいいの
 一緒に罪の淵に落ちましょうよ
 ねぇ、だめなの?




075 味噌汁

 おばあちゃんの味噌汁は甘くて優しい味がする。
 とろけるほど煮込まれた玉ねぎと淡い白味噌の香り。心臓が悪かったおじいちゃんのために減塩料理を一生懸命勉強したと言う。
 味が薄いけど、とおばあちゃんは言うけれど、おじいちゃんへの愛の味がいっぱい溶けているよ。







ランキング参加中です
にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ


更新通知をLINEで受け取る