140字SS 076~080

076 微熱のバニラアイス

「生きてるかー?」
 玄関を開けると珍しく君がいた。
「たかが微熱だって言ったろ?」
 まぁまぁと部屋に上がり込む君。
「ほれ、お見舞いの品。溶けるから早く食えよ」
 なんで風邪っぴきにバニラアイスなんだよ。
「案外元気そうだな」
 君の手が僕を撫でる。
 君がカッコよく見えるのはきっと微熱のせい。




077 空の砂時計

 僕らには時間という概念がない。
 悲しませることも、裏切られることも、離れることもない。
 ガラスの中に砂がない。
 あなたへの愛を囁くことも、抱き締められることもない。
 ただ僕が君を愛し、あなたが僕を愛している。その事実だけが存在する。
 そんな世界をあなたは望むかい? 変化を恐れないで、あなた。




078 ヘキサゴン

 世界は美しい。
 甘ァい蜜を蓄えた蜂の巣。どこまでも連なる炭素。舞い落ちる雪。
 神が作ったこの世界は美しいものに満ちている。
 その美しさを発見した過去の人々の功績を僕は讃えたい。
 頬に熱いものを感じて、僕は六角形を考察する。
 今日は何を見つけられるだろうか。後世に何が残せるだろうか。




079 下手な嘘

「あたしたち、もう別れましょう?」
 瞳が揺らぐ君。あなたの首筋に嘘を見つけてしまったの。あたし、契約違反は許せないタイプなのよね。
「今までありがとう」
 上手に隠しても女の嗅覚は鋭いの。
 君はほんの少し明るい声で「俺も大好きだったよ、ありがとう」と喜ぶ。最後の嘘だけは下手なのね。




080 狂ったものさし

 おかしいな、もう年が暮れる。
 君と共にいる時間はとても短く感じるのに、会えない時間はこんなにも長く感じる。
 時のものさしは伸縮して狂って僕の都合に悪いように時間を測る。
 君と一緒の1年はあっという間だった。
 あとどれくらい一緒にいられると「感じる」かと考えると怖くてしょうがないよ。







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