140字SS 091~095

091 おため詩

貴方の愛の言葉 どうしてそんなに軽いのかしら
使い古されたフレーズ 私は作り笑いを浮かべたわ
あの子にも その子にも きっと貴方は囁いた
私だけの言葉を頂戴
わがままだと言われてもいい
私だけの言葉を頂戴
貪欲になってもいいかしら




092 終わりの旅

「ここは電子カード使えないのね」
 彼女は紙の切符を握りしめる。
「いいじゃないか、思い出に残るぞ」
 彼は陽気な声を作った。
「この山も、遠くに見える海も、一面の茶畑も、あなたと見られてよかった」
 彼女は彼の膝に涙を落とす。彼は彼女の肩を強く抱いた。




093 空膜

 冬の夕暮れ空は低いところが燃えるように紅く、薄紅、黄、紫と色が連続して移り変わる。
 高いところは暗いペールブルーで、星のないプラネタリウムのスクリーンを見ている気分だった。




094 母へ

 パートのおばちゃんがくれたチョコブラウニー。娘が昨晩作りすぎて困ったからとタッパーに入れて配っていた。
 砂糖が所々固まっていて、パサパサして、ココアの香りがきつくて。僕は料理が下手だった母のことを思い出した。
 都会の喧騒に忘れていたメールの続きを送る。
「母さん、いつもありがとう」




095 暴力的な言葉

 誰でもいいから愛されたい、なんて愛を知らないから言えることだ。
 目の前の生き物は僕に涙ぐみながら好きだと言った。
 一方的な告白は暴力的で、僕は過去の僕の愚かさに気付く。
 好きでもない人からの愛ほど気持ち悪いものはなかった。







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