佐久間姉弟の事情 01 冬の夜と春の朝

「早織(さおり)、痛くない?」
 木製の低い二段ベッドの下。聡(さとる)は彼女に覆いかぶさり、潤んだ長く黒い髪を撫でた。早織は自らの中心を押し広げられる圧迫感に、彼の背にしがみついた。恐ろしいものから守られたいとばかりに。
「処女じゃあるまいし、痛くは無いって。でも、もう少しこうしていて」
 早織はしっとりとした聡の肩に頬を埋めた。真冬の一月三十一日。電気ストーブだけがこの部屋を暖める酷く寒い夜。熱を求めるのは動物として当然かもしれない。
――――でも彼女たちは人間としては当然ではなかった。
「姉ちゃん、オレ、高校受かるかな」
 早織のことを『姉ちゃん』と呼ぶのは聡だった。弱気な声に早織は抱きしめる力を更に強めた。
「大丈夫。聡は私の『弟』なのだから。過去問も満点だったでしょう?」
「オレ、姉ちゃんと同じ高校じゃなかったら高校行かない」
 そんなこと言わないの、と早織は聡の柔らかな黒髪を慈しむように撫でた。潤んだ双眸は不安と熱で揺れていた。何かの引力で引き寄せられるように唇を合わせる。それが合図だった。
 聡は早織の全てを奪うように腰を穿った。早織は自らの腕を噛んで声を殺す。しかし甘い吐息は律動の度に鼻から抜けて漏れだした。
「早織」
 聡は早織の腕を掴んで手をシーツに押し付けると、唇で彼女の口を塞いだ。熱い舌で彼女の声の全てを飲み込むように。
「んっ、んっ」
 彼女の中が締まる。奥のお腹側。それが早織の弱点だった。執拗にそこを圧迫すると早織の声は一段と高いものになった。
「早織、可愛いよ。世界で一番可愛い」
 掠れた男のささやきに早織は聡の首に腕を回してキスで答えた。聡が熱い。真冬の冷たさから逃げるようにお互いを貪り合った。いつか終わりが来るまで。

「姉ちゃんさ、やっぱりお腹側弱いよね」
 白濁液の溜まったコンドームと濡れたティッシュをゴミ箱の奥に隠して寝転ぶ。貰い物の木製の古臭い二段ベッドの下段。中学三年生の聡と高校二年生の早織の二人が並ぶには少々狭かった。
「いいじゃない、開発されたってことで」
 汗でひんやりとした聡の胸に頬を寄せると、きめ細やかな肌が吸いつく。こんな真冬でもセックスの後は暑いと聡は言うが、早織は性の名残でお腹が冷えて仕方なかった。腰まで羽毛布団を被って気だるさが眠気に変わる瞬間を待っていた。
「姉ちゃん、明日は合格発表だね」
 そうだね。と半分眠りに落ちた早織が答える。
「試験の翌日に合格通知が届くってことは、試験中には合格通知をもう送っちゃっているって。私立の推薦なんて全員受かるから。私のときもそうだったし」
 聡の頬に手を添える。艶のある黒髪にくっきりした目鼻立ち。筋肉質だけれど細い体。長い手足。これでも一応、人気雑誌の読者モデルなんてしている。
「芸能科のある高校じゃなくてよかったの? お母さんがお金の心配はしなくていいって言っていたのに」
 ううん、と聡は首を振る。
「姉ちゃんと一緒に高校通ってみたかったんだ。それに奨学金もらえるし」
「そっか」
 柔らかな唇にもう一度触れて、早織は頭まで布団を被った。
――――聡は私の可愛い弟だから。
「姉ちゃん、上戻らないと母さんに見つかるよ」
 その言葉はもう早織には届いていなかった。
 早織はそのまま眠りについた。その日は悲しい夢を見た気がする。

「姉ちゃん!」
 季節は廻り、四月。聡は早織と同じ私立高校に入学した。
「聡、早くしないとホームルーム始まるよ」
 高校三年生になった早織と高校一年生になった聡。
 まだホームルームまでは三十分もあるというのにどういうことかと聡が首を傾げていると、
「あの! もしかしてモデルの佐久間聡さんですか?」
「はい、そうで――」
 返事の途中で黄色い悲鳴が上がる。気付けば廊下に女子生徒の人だまりができていた。
「姉ちゃん助けて」という言葉も虚しく。
「佐久間早織さん! 今日もお美しいですね」
「はーい。みんなありがとー!」
 早織の周りにもたくさんの人が集まっていた。笑顔で返事をする早織は、それはもう美しくて。
「えっ、姉ちゃん?」
「ほら、急がないとダメでしょ?」
 早織は聡の腕を引いて抱きとめる。
「こちらは私の弟の聡です。みんな、可愛がってあげてね」
 黄色い悲鳴と、男子生徒たちの羨望と。
 でも誰も知りはしない。佐久間姉弟がセックスをしていることを。



お読み頂きありがとうございます。
「美少年×美少女のラブラブえっちが読みてえええええ」と叫んでいたら僕が書くことになりました。自給自足大事。
なんで近親相姦になったんだろう。僕にも分からない。
楽しくレッツセックス!な小説にしていきますので何卒お付き合いのほどよろしくお願いいたします。
不定週木曜21時更新です。どうぞお楽しみに!
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