青嵐吹くときに君は微笑む 13

 ダイニングテーブルにつくと、何故かお皿が四人分用意されていた。
「あれ、今日は四人なんですか?」
「うん、もうすぐ着くと思うよ。バイトしてから来るって言ってた」
 勢いでキスしてしまった先輩は意外とケロッとした顔をしていて。意識しているのが俺だけのようで何か寂しい。いや、本当に俺の煩悩どうにかしよう。
「メリークリスマース!」
 女性のけたたましい声と共にリビングのドアが開く。真っ赤なワンピースに黒いベルトに黒いニーハイ。そう。先程スーパーの前でケーキを売っていたミニスカワンピサンタクロースだ。
「ナギちゃんメリクリー! 今日のご飯は何かね? ――おや? 君たちは先程見かけたアベックではないか!」
「アベックって華(はる)ちゃん、それ死語だよ。あとバイトの服装のまま来たの?」
「もう、そんな固いこと言わないのナギちゃん」
 華ちゃんとよばれた女性は、あろうことか酒本先輩と熱い抱擁を交わしていた。先輩が、女性と? しかも嫌がることなく戯れている。有体に言えばカップルのイチャイチャそのものだ。
 俺の動揺も大きいが、心配で滴の方を見る。案の定、真っ青な顔をして固まっていた。
「華ちゃん苦しいよ」
「ふふーん、またあたしの乳が成長したってことか。ほれほれ」
「もう、やめんしゃい」
 確かにふくよかな胸部を先輩の肩あたりに押し付けている。うん。でかい。いや、そうじゃなくて。あの酒本先輩が拒否反応を起こさずに女性と戯れているという絵に圧倒される。実は彼女なのか?
「あの」
 滴が震える声で切り出す。
「二人はどのようなご関係で?」
「あーメンゴメンゴ、ナギちゃん可愛いから習慣でね。あたしは扇田華(せんだはな)。ナギちゃんとは同じ大学で、予備校時代からの仲さ。あのナギちゃんにあたし以外の友達ができるとは。いやー、おばさん泣いちゃう」
 うんうん、と目を手で覆って泣きまねをする扇田華という人物に、なんというか、胃もたれがした。とりあえず友達らしい。酒本先輩も「また華ちゃんがバカ言ってる」と呆れているのでこの反応は正常らしい。
「とりあえずご飯にしようか。みんな、手洗いうがいしたら席についてね」

「へー、コンサートの日に零ちゃんがナギちゃんをナンパねー。やるじゃん、君」
「ナンパっていうか、偶然会っただけで」
「でも好きなんでしょ?」
 助けてください。この人すごく強烈です。明るいを通り越してギラギラしています。恋バナ大好き女子大生怖いです。
「好きというか、その、先輩として、はい」
「ホントんとこはどうなんだろうねー。ね、ナギちゃん?」
「華ちゃん、零くんをイジメ過ぎないよ?」
 呆れて笑う先輩の耳がほんの少し赤いなんて、俺の心は舞い上がりそうだ。
「お兄ちゃんは無いでしょ。男同士なんだし」
 先程から黙々とローストビーフとマッシュポテトを食べていた滴がポツリと言う。
「え? ナギちゃんゲイだし、普通じゃない? 毎年二人、クソレズ&クソホモで寂しくクリスマスしてたじゃんね」
「えっ……?」
 滴のナイフが落ちる。そのまま、心臓に落ちたかのように滴は真っ青になっていた。



お読み頂きありがとうございます。
アウティング、ダメ、ゼッタイ。
華ちゃんの強烈なキャラが実は好きだったりします。
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