青嵐吹くときに君は微笑む 21

「お邪魔します」
 はいはい、いらっしゃい。といつもより化粧が濃い母が扇田さんと渚先輩を迎える。
 冬の日曜日。今日は快晴で雲一つない。白んだ空に白鷲が一羽飛んでいた。
「まあまあ、美人さんじゃないの。零ったらもうっ」
「ママちょっとは落ち着いてよ」
 滴に釘を刺されても母さんは浮かれていた。いつも一緒に遊んでいる友達が来るとしか言っていないのにここまで勘違いされると、やはり世間一般のバイアスというものは恐ろしいものだ。
「初めまして、扇田華です。いつも零くんと滴ちゃんにはお世話になっています。こちら、お土産です」
 扇田さんは近所のケーキ屋のお菓子をバイト先で身に付けた営業スマイルで母に渡す。いつもの「クソ男」が出てこないか心配だったが、さすがにこれなら言わないだろう。
「初めまして、酒本渚です。零くんとは同じ部活で、それから仲良くさせてもらっています」
 後ろにいた渚先輩も続けて挨拶する。「母親」というものに渚先輩がどんな反応をするかと思ったが、滴とのリハビリの成果もあってか柔和な笑みを浮かべていた。
「あらあら可愛い先輩だこと。うちの零が迷惑かけてないかしら。さあさ、上がってちょうだい」
 母に促されるがまま、俺たちはリビングに進んだ。
 リビングには父さんもいて、それぞれ挨拶する。
「零がこんな美人さんを捕まえるなんてなぁ」
「ねぇ」
 扇田さんが心の中で「まったくねぇ」と同意しているのが聞こえた。どうせ俺はクソ男ですよ。先輩のことを言い出せないような。
 リビングのこたつにみんなで足をつっこむ。先輩の家のこたつより小さい気がするのは両親と飼い猫がいるからだ。
 隣に座った渚先輩がこたつの中で手を繋いできた。誰にも見せないって、こういうことなのかな。

「――といういきさつで出会ったんですよ」
「へぇ、渚くんの友達だったのね。そんな偶然もあるものね」
 悠長に扇田さんが両親に俺たちの出会いを説明した。扇田さんって意外と饒舌だ。
「渚くんもアイドル好きってことは、もしかして滴と?」
「ママ、残念ながら私フラれてる」
 あれま、なんて母は笑った。父は少し不機嫌なのか照れているのかずっと新聞を読んでいた。
「フラれても一緒に遊んでもらえるなんて幸せなことよ。告白ってそれだけで今までの関係を全て失うこともあるのだから」
 そうですよね。と渚先輩は呟いた。自分の気持ちを伝えること。自分の存在を伝えること。それは恋愛だけではなくて日常にも潜んでいる。そして、何もかも失ったのが、酒本渚という人物だ。
 俺は、渚先輩からもう何も奪わせたりしない。
「あの、お手洗いお借りしたいのですが」
 先輩が申し出ると、滴も立ち上がってトイレまで案内した。
 こたつには俺と扇田さんと両親だけになる。
「あのね、母さん。俺が付き合っているのはこの人じゃないんだ」
――――俺が本当に好きなのは、



お読み頂きありがとうございます。
相原夫婦登場。ありふれた親かな。
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