高嶺の雪

 彼と歩いた浜辺から、富士を見上げた。鈍い銀色の空に包まれた高嶺には真っ白な雪が降り積もっている。彼が見たいと言った富士の姿がそこにはあった。雪の中で感じた彼の熱を思い出す。今もあの山の上には、ひらりひらりと白い雪が降っている。

 時は七月頭。俺はいつものように籍だけある高校とは真逆の方角にある図書館に向かった。陽炎が見えるほどの陽射しに眩暈がするようで、踏み入れた図書館の涼しさが掻いた汗を心地よく冷やしていった。
 整然と並んだ本の森を抜けていつもの座席、一番奥のアメリカ文学の前の閲覧席に腰掛けようとした。
 今日は、いつもと違う。
 四人掛けのテーブル席に赤いポロシャツ姿に短いブロンド髪の男がいた。大きな体格を見る限り欧米人だろうか。白い肌に色素のない毛がキラキラと光る逞しい腕。男は何かテキストらしきものにシャープペンシルで書きこんでいた。
 話しかけられませんように。そう願って俺は対角の席に着く。他の席に着けばいいものを、俺のこだわりがそうさせなかった。
 男の様子をうかがいつつ、俺も高校で買わされた教科書とノートを開く。今日は古文。伊勢物語の『東下り』を読んでみるが意味が分からない箇所の方が多い。それでも、和歌が美しいと思えるのは何故だろうか。
「すみません……Excuse me」
 嫌な予感がしていたが、斜め前の男に話しかけられた。顔を上げると濡れた碧い瞳が俺に向けられる。美しさに目を奪われる一方で、正直逃げたかった。
「ココ、分からない。教える、ください」
 テキストを見ると、英語で書かれた日本語のテキストだった。漢字とひらがなを線でつなぐらしい。
 俺は英語が得意ではなかった。どう説明したらいいのだろう。
 一瞬考えて、彼の横まで行って漢字を指差し、答えまでテキストをなぞった。
「ここが、ここ。で、これが、これ」
「thank you! ありがとうございます」
 どういたしまして、が分からなくて俺は頭を小さく下げた。逃げるように対角の席に戻ると、男はペリドットの瞳を潤ませて、柔和に微笑んだ。綺麗だ。そう俺は思った。
 そのままむず痒いような沈黙の中で、俺たちはそれぞれテキストに向かっていた。時々気になって彼の方を見ると、色素の薄い髪が海辺の窓から差し込む光でチラチラして、その美しさに見とれるのであった。
 何度目かのとき、うかつにも目が合ってしまった。彼は目を細めて笑う。いたたまれなくて、俺はあーとか、うーとか、言って鼻を掻いた。見なくても頬が熱いのが分かった。夏の陽射しのせいならよかったのに。
「すみません。お腹空きました。お店、知っている、ますか?」

 俺は初対面の外国人と、近所の食堂に来ていた。港に近い魚が美味しい地元民しか来ない古びた食堂。彼は物珍しそうに店内を見渡す。壁中に貼られた手書きのメニューのどれだけを彼は読めるのだろう。
「じんちゃん、いらっしゃい。今日はまたえらくイケメンなお友達が一緒ねぇ」
 旦那さんと二人で食堂を切り盛りしているおばちゃんに小脇をつつかれる。友達、なのだろうか。
「おばちゃん、アジフライ定食ふたつ」
 はいよ。とおばちゃんが嬉しそうに言うものだから俺はさらに恥ずかしくなった。
 彼と向かい合って座ると、彼の顔立ちの美しさが直射日光みたいで俺は何度も見ては顔を背けていた。
「私はニューヨークから来ました。Stephen Redです」
「スティ……えっと?」
 復唱してみるがうまく聞き取れなかった。
「Red. Here」
 彼は来ていた赤いシャツを引っ張ってみせた。そうか、赤のレッドか。
「レッドさん」
「Yes」と彼は嬉しそうに笑ってみせた。ペリドットの瞳に白い歯。なのに、名前は赤。名前がレッドさんだから赤い服を着ているのかな、なんて思うと面白くて小さく笑ってしまった。
「あなたも、笑うですね」
 煩い、なんて思ったが、嬉しかったから言わないことにした。

「はい、お兄さんがイケメンだからおまけだよ」
 肉厚なアジフライにかぶりついていると、イケメンに弱いおばちゃんが小鉢をふたつ並べる。レッドさんは思っていたより箸使いが上手だった。
「これ、何ですか?」
 彼がおばちゃんに訊く」
「タコときゅうりの酢の物。えーっと、酢の物って英語でなんていうのかしら。オクトパスとキューカンバーよ」
「Oh!!!Crazy!!!」
 どうしたどうした。
「私たち、Octopus、食べないです。日本人Crazyです」
 怯えて箸を握りしめるレッドさんが面白くて、俺はわざと見せつけるように食べた。うん、タコの歯ごたえが良くて美味しい。
「食べると、死ぬ?」
「死なないよ。ベリーデリシャス」
 ニヤリ、と挑戦的に笑ってみせると、レッドさんもおそるおそる箸を伸ばす。
 ヤム、と声を上げて口に入れる。モグモグ、ごっくん。
「美味しいです。日本、凄いです」
 でもCrazyです。と挙動不審なので、そんなレッドさんが可愛く思えた。

 食堂を出ると、レッドさんは、今日はありがとうございました、と頭を下げた。夏の陽射しでブロンドの髪が透けて見えて、どんな言葉を使ったらいいのか分からないほど美しかった。
 それじゃあ、と立ち去ろうとするレッドさんのシャツの裾を俺は咄嗟に掴んでいた。
「えっと、Tomorrow……Will you come the library tomorrow?(明日もあの図書館に来る?)」
 レッドさんは嬉しそうに微笑んで、Yes、と答えた。
「名前、聞いてないでした。あなたの名前」
「名前……My name is Yamabe Jin.(俺の名前は山部仁です)」
 よろしくお願いします、仁さん。レッドさんは俺の手を俺よりずっと大きな手で包んだ。

 それから、俺たちはあの図書館の最奥の机で会うようになった。俺が先にいる日もあれば、レッドさんが先にいる日もあった。それぞれが勉強しているだけ。それでも互いの気配を感じられるだけで嬉しかった。たまに一緒にご飯を食べた。
レッドさんは語学留学という名目で日本に来たが、本当はアニメが好きだったから。英語に翻訳された日本の漫画も数冊見せてくれた。しかしながら静岡じゃ殆どアニメが放送されていない。そのことを教えたらひどく嘆いていた。アニメショップがどこにあるか一緒に検索したら新幹線に乗らなきゃいけないことがわかってさらに落胆。そんな姿すら、可愛らしく思えてしまう。
どうして静岡のこんな小さな港町を選んだのか聞いたことがある。彼はたった一言「富士山が見たかったから」と微笑んだ。
そして夏の陽射しは日に日に強くなって本格的な夏が始まろうとしていた。つまり、この二人だけの時間の終わりを意味していた。
 その日、レッドさんに問われた。
「仁さんは、もうSummer vacationですか?」
 サマーバケーション。夏休みのことかな。
「No, 俺は学校行ってないだけ。I don’t go to school」
 レッドさんは眉尻を下げた。
「学校、嫌い?」
「ううん。嫌いじゃなかった。でも、好きでもない。人がたくさんいるのは怖いから」
「So……」
 レッドさんは俺の手を取って、大丈夫です。と静かに言った。私がいます、と。
 俺はその手を振りほどけなかった。怖い、はずなのに。
「海、行きませんか?」
「うん」
 夏休みがもうすぐ始まる。静かな図書室が、終わる。
 港にほど近い浜辺には、人が他に誰もいなかった。雄大な波の音。繋がれた俺たちの手を高い日が照らす。しっとりと、海のまとわりつくような風が肌を撫でた。
「ここから、富士山、見える?」
「富士山はあれだよ」
 海に背を向けて指差す。
「茶色なのですね。絵だと青の山と白の雪があります。Where is the snow?(雪はどこ?)」
「それは冬の富士山だよ。夏は雪がないの。There is not snow in summer.」
 残念そうに肩を落とすレッドさんの手を強く握る。また行こうって、どう伝えたらいい。でも、ひとつだけ分かるのは、この気持ちの伝える言葉だ。
「あのね、レッドさん。俺、There is a thing that must be said.(言わなきゃいけないことがある)」
「なんですか?」
 レッドさんは俺に向き直って両手を繋ぐ。そのペリドットの瞳に、この言葉を捧げる。これで最後になるのだから。

「I love you」

 波の音で消えてしまいそうだった。笑って歪んだ俺の瞳の端から雫が流れ落ちる。海の中の泡となって、俺は消える。彼の顔なんて見られやしなかった。
 立ち去ろうと背を向けて砂浜を歩きだしたとき、背中が大きな体に包まれる。
「待って、ください」
 レッドさんの胸の中にすっぽり収まる。レッドさんの匂いがする。干したての羽毛布団のような温かくて、いつまでもそこで微睡んでいたいような誘惑。
「私も、愛しています」
 耳元で囁かれる甘い声は、俺の全てを許してくれたようで、ただただ泣くことしかできなかった。

 夏休みが始まった図書館は涼しい環境で課題をやりたい学生で混みあう。そんな場所に俺は恐ろしくていられなかった。俺はあの大多数の学生たちとは違う。恐怖で足がすくむ。あの日以来、俺は図書館に行っていない。レッドさんとメッセージのやり取りをしていた。
「仁さんは、元気にしていますか?」
「Yes. But, I’m lonely.(元気だよ。でも寂しい)」
「私も、仁さんにあいたいです」
「Would you like to have a lunch?(昼ご飯食べに行きませんか?)」
「いいですね。でもタコはいやです」
 俺は英語で、レッドさんは日本語。奇妙な会話が続く。
そしてたまに会ってはご飯を食べ、富士を見上げ、手を繋いだ。雪はまだ降らないの? とレッドさんは言う。まだまだ先だよ、と言うのだけれど、冠雪した富士山が見たい。とレッドさんは美しい碧い瞳を輝かせるのだ。それも、時折寂しそうに。

「仁さん、あなたに言わなければいけないことがあります」
 そう切り出されたのはお盆休みが終わる頃だった。その日は重く曇っていて、浜辺から見る波は黒く荒れ狂っていた。
「どうしたの?」
 あまりにも神妙な顔で言うのだから、俺の心臓は不安で大きく拍動していた。
「私はニューヨークに帰らなくてはいけません」
「いつ?」
「September……九月? の最初です」
 息が止まった。
「ニューヨークの大学に戻ります。今までありがと――」
「嫌だ!」
 黒い波の音さえも切り裂くように叫んだ。
「Don't go anywhere! Stay with me……(どこにも行かないで! 一緒にいて)」
 とめどなく流れる涙を拭うことすらしなかった。
「仁さん、私も寂しいです。でも、行かなくてはならないのです」
「No……行かないで、行かないでよ、レッドさん」
 みっともなく泣き叫ぶ俺をレッドさんはしっかりと抱きしめて、大丈夫、と言い続けた。気付けば空が破けたように重たい夏の雨が降りしきり、富士の遠雷が聞こえた。

 ずぶ濡れになった俺たちは、レッドさんの借りているアパートの一室に来た。窓からは雲に覆われた富士が見える。雲の中で閃光が瞬くのをじっと見つめた。
「レッドさんの家、初めてだね」
「何のお構いもできませんが」
 どこでそんな日本語を覚えてくるのだろう。小さなキッチンにユニットバス、六畳間の和室が二つ連なっているだけの小さな部屋だった。
「服、脱いでください。乾かします」
 代わりに渡されたのは、俺には大きすぎるTシャツだった。渋々着替えていると、レッドさんは「仁さん、細いです」と笑った。でもその瞳に色が灯っていることを、俺は嬉しく思った。
 レッドさんも着ていたシャツを脱ぐ。逞しい腕、厚い胸板、筋肉質な腰。
 俺はレッドさんの背中を抱きしめていた。
「仁さん、冷たいです」
「雨に濡れたからね。ねえ、雪山で遭難したらどうやって身体を温めるか知ってる?」
 幾分奥ゆかしすぎただろうか。それでも、レッドさんの大きな背中に頬を当てていると、彼の鼓動が速まるのを感じた。きっと思っていることは同じだ。
「Will you let me kiss you?(あなたにキスしていい?)」
 激しい夕立にかき消されそうな声だった。それでも返事の代わりに彼は、俺を抱き寄せて情熱的な口付けをくれた。
「仁さん、大好きです」
「I love you with all my heart.(あなたを心から愛しているよ)」
 じめじめした畳の上で、レッドさんは俺の想いを受け入れた。幼稚だったかもしれない。今だけでも、彼の全てが欲しいと俺は願った。彼の中で果てるとき、幸せと寂しさで俺は一筋の涙を落とした。離れがたく思っていても、いつか別れはやってくるのだ。

 その日は家に電話をして、レッドさんの家に泊まった。コンビニで買ったご飯を食べながら、お互いが知っている言葉を尽くして語り合った。ニューヨークには世界最大級のレインボーパレードがあるらしい。そこでたくさんのゲイとかレズビアンとかトランスジェンダーの人が集まるという。
「レッドさんは、行くの?」
「行ったことあります。昔、私のボーイフレンドはゲイが嫌いな人たちに殺されました。そんなことが無くなる日が来ると、私は信じています」
「No matter. I believe to come the day too.(大丈夫。いつかそんな日が来るよ)」
 大丈夫という言葉をどれだけ信じたらいいのか分からない。だけど、俺たちを繋ぐための細い強い糸だ。
 レッドさんの腕の中でその日は眠った。雨上がりの夜空は洗ったように美しくて、星の輝きがニューヨークでも同じだといいと俺は願った。部屋の片隅に置かれた赤いスーツケースが、その日の近さを感じさせた。

 九月になった。本の森の最奥、アメリカ文学の前にある四人掛けの机にレッドさんはもういない。一人でいることが当たり前だったのに、人の温もりを知ってしまった俺はこんなにも弱い。ただぼんやりと、学生たちがいなくなった静かな図書館で俺は高卒認定試験の勉強をした。
 時差の関係でレッドさんとメッセージのやり取りができる時間は限られている。それでも全世界がインターネットで繋がっている当たり前に俺は感謝した。『東下り』の時代、恋人たちは会えない時間をどう過ごしていたのだろう。文字だけのやり取りでは寂しさで身が絶えてしまいそうだというのに。
 声が聴きたい。触れたい。温もりが欲しい。体臭を体いっぱいに感じたい。
 どうしてこんな欲深くなってしまったのだろう。
 ふと、本棚の横板に目を向けた。俺はある決心をした。

 十二月、俺はレッドさんにメッセージを飛ばした。
「I will be flying after one hour.(一時間後に飛行機に乗るよ)」
「I will be in New York after a half day. Please come pick me up.(半日後にはニューヨークに着くから迎えに来て)」
 既読はまだつかない。メッセージのやり取りはしていたけれど、もう忘れられているかもしれない。一種の賭けだった。

 空港には雪が積もっていた。日本とは比べ物にならない寒さに青いマフラーに顔を埋めた。表記は殆ど英語だけれど、レッドさんのおかげで大方の英語は理解できるようになっていた。税関を抜けて国際線の出口で愛しい人の姿を探す。
 いない。やっぱり俺なんてもう微かな思い出なのかもしれない。ホテルは取ってあったから大人しくバスに乗ろう。
 歩き出したそのとき、
「仁さん!」
 赤いダウンジャケットを着たレッドさんが、急いた息そのままに俺を抱きしめた。
「どうしてニューヨークに?」
「I want to meet you(レッドさんに会いたかったから)」
 熱い抱擁を交わしてハッと人前であったことに気づく。すぐに離れて、それでも手を離さずに俺たちは歩き出した。
 レッドさんはニューヨークのレンガ造りのアパートで一人暮らしをしていた。だからホテルはキャンセルしてレッドさんの家にしばらくいることにした。
「これ、お土産」
 空港で見つけたレッドさんが好きな武将系アニメのグッズを渡すと、跳ね兎のようにレッドさんは喜んでいた。大の大人が無邪気にはしゃいでいるとどうしてか可愛く思えてしまう。それが俺の「萌え」ポイントなのかもしれない。
 あの夏と変わらないレッドさんがここにいる。少し髪は伸びたかもしれない。それでもブロンドの髪は美しくて、変わらない碧い瞳には吸い込まれそうだった。正面から抱きしめるとレッドさんは俺の髪を撫でて、額にキスをした。こそばゆくて、幸せでお腹のまんなかから温まるようだった。

 ニューヨークにいる間はレッドさんの案内で色んな所へ行った。
 ホットチョコレートを飲んだり、ショッピングをしたり。公園では初めてアイススケートをした。へっぴり腰の俺を見てレッドさんが笑うのが悔しくて、それでも、レッドさんに教えてもらいながら滑るこの時間はとても幸せな時間だった。
 一週間、彼の案内で色々なところへ行った。
 そして、最後の夜にはレッドさんはビールで、俺はコークでバッファローウイングを食べた。
「仁さん。ニューヨークまでのお金はどうしたのですか?」
 アルコールで目元を赤くしたレッドさんが問う。
「あれから図書館でバイトしたんだよ。毎日だったからすぐお金貯まっちゃった」
「そうでしたか。頑張りましたね」
 くしゃくしゃと俺の長い黒髪を撫でるものだから、俺はまた彼の熱量を思い出さざるを得なかった。

 レッドさんの部屋のベッドでお互いの形を確かめ合った。
あの夏の日々を忘れないよう。愛しい人の形を忘れないよう。
 静かに降り積もる雪は、あなたが見たかった富士の高嶺にも今も降っているだろう。

「See you, Mr. Red(じゃあね、レッドさん)」
 ニューヨークで過ごした日々はあっという間だった。出国前に、もう一度だけ抱き合う。
「また、会えますよね」
「もちろん」
 スーツケースを引いて国際線のターミナルへ向かう。愛しい人が手を振るのをずっと俺は見ていた。
 飛行機に乗る直前、スマートフォンを機内モードに切り替える前にレッドさんにメッセージを送った。
「When I take the path To Tago's coast, I see Perfect whiteness laid On Mount Fuji's lofty peak By the drift of falling snow.(田子の浦に うち出でてみれば 白妙の 富士の高嶺に 雪はふりつつ)」
 コンマ一秒、既読のマークが付く。
「きぬぎぬのふみ、ですか?」
 こんなに速く届く後朝の文が千年前に考えられただろうか。そう思うと、少しだけ笑みがこぼれた。また会えるよね、レッドさん。

 年が明けて、俺はまたあの浜辺で富士を見上げていた。晴れ渡った空には青い山並みと白い雪が見える。レッドさんに見せようとスマートフォンのカメラを起動しようとしたそのとき、メッセージが届いた。
「仁さん。いい知らせがあります」
 逸る気持ちを飲み込んで、画面を見つめる。
「日本の企業に就職することになりました。四月からまた日本で暮らします」
 こみ上げる幸せをここから叫んだら、富士の高嶺に届くだろうか。
 一緒に見よう。富士の山を。

高嶺の雪(完)



お読み頂きありがとうございます。
当作品は百人一首アンソロジー「さくやこのはな」参加作品です。
お題は〇〇四番の「田子の浦に うち出でてみれば 白妙の 富士の高嶺に 雪はふりつつ」です。
和なお題だからいっそアメリカ人とか出しちゃう?というノリで設定を固めていきました。
幸せたっぷりなお話になれば嬉しいです。ありがとうございました。

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