蒼血のアフェクシオン Chapter00 蒼き血汐 04

 銃弾の雨が降り注ぐ。それは私の服を、髪を、皮膚を切り裂いた。でも私は全く避けようとしなかった。どうせ死なない、死ねないと決まっているのだから。
 私は真上に跳び上がりながらナイフをホルダーに仕舞い、まず合金でできた楔をサブマシンガンの薬室に《跳》ばし、埋め込む。使い物にならなくなったそれを投げ捨て懐のハンドガンに手を伸ばすが、時すでに遅く私は目の前に降り立ち、目が合ったことを確認すると腹に蹴りを入れ、細見でスーツ姿の容疑者を突き飛ばす。もう一人のサブマシンガンを持った若い男がハンドガンを構えるがその手と足の甲に楔を埋め込み、貫通させた。
 アタッシュケースを持った複数の容疑者が逃げる足音を察知し、まだ殺しはしないよう全員の腹腔及び臓器めがけて楔を《跳》ばす。血を吐いて倒れる者、糞尿を垂れ流して痙攣する者、状況に頭がついていかず腰を抜かす者。火薬と鉄と酸のすえた臭いが鼻を刺激する。
 倒れた男の顎を掴み、瞳を覗く。馨じゃなくても分かる。死の恐怖に怯える顔だ。
 私は悲しかった。人を傷付け殺すことを悲しいと思わない自分が悲しかった。目の前の惨状に慣れてしまった自分が恐ろしかった。
 確認した者たちの心房に楔を《跳》ばし、順にとどめを刺してゆく。そして次の楔を構えたとき、急な頭痛に襲われた。楔がコンクリ―トに落ち、その場にうずくまる。
「げぇっ……ゲホゲホ…………」
 吐瀉物でワンピースの裾が汚れた。同時に、私の中に声が聞こえるような感覚がした。誰のものかも、何を言っているのかも分からない。ただ、「彼女」が悲しんでいることだけが理解できた。
 次の瞬間、肩から赤黒い血を流すもまだ動くことのできる者が運命に抗うように私向けて発砲する。すんでのところで《跳》び、かわす。袖で汚れた口元を拭い、コンテナの上で体勢を立て直す。先程の男が逃げる足音を聞き取り、太もものナイフをふくらはぎに向けて投げた。骨が砕ける音が煩いと思った。
 もう身動きとれる者は私を除いてなかった。死を悟った瞳を順番に覗き、彼らが流す緋色の血に手を汚した。あなた方は悪くない。私も悪くない。悪いのは……

 16時50分、容疑者全員が絶命した。

***


 そして現在。
「んっ……むつきぃ、そこやぁ……」
 うつ伏せになった拓磨の孔を睦樹の指が出入りを繰り返している。
 ぐっと中を圧迫すれば拓磨は快楽に涙を流して啼いた。魔法士故の青白い肌が崇高な雰囲気を醸し出し、畏怖すら感じる。
 しかしこれは、この子は本当に拓磨なのだろうか。少女のような少年はこんなにも睦樹を惑わせる。吸い付くような白磁の肌に細い躯体。闇夜に響く擦れた声。
 もう考えることはやめよう。今は快楽の渦に溺れることにしよう。
 睦樹は一思いに拓磨を貫いた。拓磨が嬌声を上げ身体を震わせる。落ち着くまで一呼吸待つと、ゆっくりと律動を始める。
 俺には拓磨を傷付けることしかできないのだろうか、と睦樹は自問する。抱くことでしか癒せないのだろうか。心の隙間を埋めることはどうやったらできる? それでもいい。この世界が彼を殺そうとも、俺だけは彼を守る。
 そして二人は快楽の先へと果てた。弓なりになった拓磨の白い背中には、本当は羽があったのではないのだろうか。

 白でも黒でもなく、蒼い翼が。

プロローグ 蒼い血汐 完

こんばんは、佐倉です。お読みいただきありがとうございました。
これにてプロローグ完結となります。
もっとほんわかしたお話が書きたかったのにこの暗さです。お許しください。
Chapter01からはがらりと雰囲気を変えて学園ファンタジーとなりますので是非お付き合いください。
ご愛読のほどありがとうございました。

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