きみへ

 何があったのか聞きたいけれど、聞きたくない。
 俺はもう気付いていた。聞いたって自分を傷つけてしまうだけだから。

「なあ、俺、彼女と別れたんだ」
「そう……なんだ」
 唐突にきみは話し始めた。
 
 俺には辛すぎる現実が、きみの言葉によって姿を現す。

 コイツがどれだけ彼女のことが好きだったのか、俺は知っている。
 それなのに、喜んでいる自分が居る事が悔しい。
 コイツの幸せがいつだって俺の幸せのはずなのに。

 ふと俺の袖を掴んだきみは、いまにも泣きだしそうな顔をしている。
 きみを抱きしめる事を俺はしてはいけない。
 そのかわり、俺は笑った。

「元気出せよ。またいいことあるさ。悲しい顔してると幸せが逃げるぞ?」
「うん、ありがと」
 無理して笑うきみのぎこちない笑顔が、たまらなく愛おしく思えた。

 今日だけはコイツが家に入るまで見送った。
「また明日、おやすみ」

――――きみのことが、大好きだ。

 閉まったドアの前でそっと呟いて家路に着いた。

 オレンジ色の空が、俺の影を伸ばす。
 苦しくて、寂しくて、幸せで。
 ギュッと制服の裾を掴み、歯を食いしばる。

 いつかこの想いは届くのだろうか。
 いつこの声が聞こえるのだろうか。



こんにちは、佐倉です。
今回は短いお話というより、散文詩のようなものになりました。
この文章は僕がまだ中学生のころに書いたものを少し修正したものです。
恥ずかしいような未熟なような、それでも僕は好きですよ。
いつもたくさんの拍手をありがとうございます。

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