140字SS 006~010

006 冬の夜語り

並んで寝転びながら自分の想いや信念を語り合う
ほんの少し暖かくて寒い夜
窓から見える氷柱が街灯でキラキラして
愛しさで包まれるこの幸福感
朝がやって来るのはもう少し先のこと




007 肌の記憶

貴方と身体を重ねた次の日は風呂に入れない
貴方に触れられた記憶が泡となって解けてしまうようで怖いから
肌に貼り付く気泡が触れると貴方より熱い湯の中に離れて浮いて消える
貴方の体温と香りと質感が消えてしまわないよう僕は震える自分を抱き締めた
「お願い一人にしないで」と闇夜に呟いて




008 痛みを抱きしめる

「死ぬこと以外掠り傷」と彼女は言った
でも痛くて痛くてたまらない
毎日血を包帯に滲ませて
それでも残酷に「生」は在り続ける
瘡蓋になったから彼女は笑って言ったのだろう
痛みは忘れても消えやしない




009 甘い赤

恍惚とした痛みを頂戴な
白い水で犯されて
赤い花弁を散らしましょう
貴方にこの深紅をあげる
甘い、甘ァい、この赤を




010 溜め息

「はぁ……」と重く吐き出した息は白くなり
冬の街はキラキラと暗く輝いて
私は貴方と手を繋ぐことも許されずに三歩後ろを歩いた
どうして口付けを交わしてしまったのだろう
熱い頬が冬の夜風に嫌に意識させられる
立ち止まると彼は息を吐いた
貴方の溜め息の理由が、私と同じものならいいのに

覚えているかな、なんて初夏の夜に微笑んだりするものです

今でも思い出して涙が流れるのはまだ思い出になっていないからだろう
昨日のことのように思い出すんだ
胸が張り裂けそうになる
でも、思い出になったらちょっと寂しいかもしれない




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