蒼血のアフェクシオン Chapter01 魔法の学園 03

 桜の花びらが風に舞った。蜜瑠はぼんやりと立ち尽くす。今日、私はあの少女に助けられて、空を飛んで、お姫様抱っこを……。夢だと言われたら夢なのかもしれない。信じられないようなことが起きるたびに私は夢と現の境目がどこにあるのか見失う。それでもこれは私が体験したことだ。これが「魔法」というものだから。
 すっと息を吸って入学式の会場である大講堂を目指そうとしたとき、1人の女生徒に腕を掴まれた。
「貴女、今、羽鳥様に連れられてきましたよね」
 困惑して周りを見ると、何人もの生徒がこちらを見て何やら話している。
「ええと、確かにあのロリィタ服の人にここまで送ってきてもらいましたよ」
 それを聞くと彼女は黄色い悲鳴をあげて飛び回った。
「羨ましい! 羨ましいわ! 羽鳥様とお近づきになれるなんて!」
「そ、そんなに凄い方なんですか?」
 はしゃぎ様に動揺しつつ訊く。確かに凄いとは思ったけれど、魔法使いってみんなこうなのかと思ってしまっていた。
「貴女、外から来た子ね? 彼はこの街を守るヒーローなの。特魔士の中でもトップクラスの実力で、加えて最年少で特魔士に選ばれた天才なのよ。それになんといってもあの美しさ! 空を舞う姿は鳥の羽のようだわ」
 興奮交じりにうっとりと語る彼女に私はどう反応したらいいのか分からず、適当に相槌をして聞いていた。知らない単語もいくつかあって私はますます困惑するばかりだ。
 確かにあの「ハトリサマ」と呼ばれる少女は美しかった。細い顎のラインとか、長い睫毛とか、主張しすぎない小さな鼻とか、透き通るような青白い肌とか。
「――あんなに可愛らしいのに男の子だなんて、私もう女の子やめたくなってしまうわ」
「……え?」
「任務中の姿が見られるなんて、貴女本当に運がいいわよ。それじゃ、入学式始まるから」
「あっ、私も一緒に行きます」
 先に進む彼女を追いかけて、城のような学園に足を踏み入れた。

「――区立篠崎学園は魔法士の育成と社会貢献を目的として……」
 大講堂の階段席で、思ったよりも若い学長先生の有難い話を、身を引き締めしゃんとして聴いていた。周りを見渡すと黒い襟に白いラインの入ったセーラー服に裾にも同様に白いラインが縫い付けられているスカートの女生徒と、襟と袖と裾に白いラインの入った黒の学生服を着用した男子生徒が各々緊張の面持ちで壇上を見つめている。
 しかしあの「ハトリサマ」と呼ばれていた少女が男の子という事実が信じられなくて、そればかり気になってしまっている。実は男の子と自称している女の子だったりするのかな? それとも女の子になりたい男の子、逆に中身は男の子で身体は女の子とか?
 様々な憶測が私の中で飛び交うが、あの柔らかい香水の香りや華奢な腕に抱かれていたことを思い出すと、性別など関係なく恥ずかしさと邪な感情が胸を染める。もし男の子だとしたら、これも魔法の神秘なのかもしれない。
「――そして、この学園では創立当初から『アフェクシオン』という制度を導入しています。高等部の1年とあなたたち中等部1年が1対1でペアを組み、先輩が後輩を育て、後輩が先輩を支え、そうして3年間共に過ごします。よりよい学園生活を送り、世に求められる立派な魔法士になることを期待しています」
 アフェクシオン。あのハトリサマと一緒だといいな。
 彼の学年も名前も知らずにそう願ってしまった。


こんばんは、佐倉です。お読みいただきありがとうございました。
拓磨は実は人気者でした。そうでもないかも?
読みましたのサインに是非とも拍手のほどよろしくお願いいたします。
次回は7月22日更新です。

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