蒼血のアフェクシオン Chapter01 魔法の学園 04

 入学式を終えると、私たち1年生は体育館へと移動した。小学校までは体育館で入学式や卒業式をしたというのに、講堂と別に体育館があることにまず驚いている。
 新入生は全部でざっと300人ほどだろうか。バスでは1人だったのに、世界にはこんなにも魔法使いが居たのだと驚いている。ずっと私は孤独だった。テレビや雑誌で見るだけで、世界には私しか魔法使いは居ないのではないのかと思っていた。でもそれは違った。「私の世界」が小さかっただけだった。言い表せない高揚感に頬がピリピリする。
「それでは、これから魔力審査と学科決定式を行う」
 急に耳元で若い男性の声がした。周りを見渡しても私と同じく声の主を探し困惑する新入生ばかりだ。
「驚かせてすまない。私は生徒会副会長の本城(もとき)だ。現在、音波操作魔法で君たちの耳元に直接声を《届け》させてもらった。ちなみに私は体育館の2階にいる」
 皆が一斉に体育館のデッキに目を向ける。そこには緑のラインが入ったブレザーを着ている男子生徒が居た。中等部の男子生徒は詰襟の学生服を着用しているので彼はきっと高等部の生徒だろう。シルバーフレームの眼鏡とさっぱりしたグレーアッシュの髪に知的な印象を受ける。
「落ち着いたところで、これから魔力審査の説明をする」
 本城副会長がそのまま説明を始めた。
 魔力審査というものは血液検査によって魔法使いであるかどうかを知る検査のことである。血中の魔法因子、Mo値が一定数より多ければ魔法使いということになる。この魔法因子によって血液が蒼くなることは私でも知っている。小学校では定期的に魔力審査が行われ、魔法使いか否か知ることができた。この審査は魔法士特別自治区の国務機関ポラリスが行っているもので、日本全国の保健所のどこでも無料かつ匿名で知ることができる。
 しかしここ、魔法使いのための国、魔法士特別自治区の魔力審査はより精密に行われる。
 Mo値の具体的な数値が出され、「魔力評価」というものがつくのである。
 一番魔力の弱い者であるランク1から一番強いもののランク7まで7段階で評価するのだ。魔力評価は生まれつき高い者も居れば、低くても努力次第で向上する者もいる。そしてこのランクに沿ってクラス分けや「アフェクシオン」の組み合わせが決定するというのだ。
 私は果たして何ランクなのだろうか。一抹の不安が胃のあたりに圧し掛かる。
「それでは、体育館の各ブースに並んで審査を受けてください。どのブースでも同じ審査が受けられますので空いているところへ並ぶように。終わった者から舞台前に整列すること」
 舞台から見て左右両方の壁際と中央にパーテーションで区切られた机があり、それぞれ専門のスタッフであろう白衣を着用した人が机の前に座っていた。壁際の割りと空いているブースに並ぶ。
 ブース越しの窓から桜が見える。日陰でぼんやりと光る桜はどこか蒼白く見えた。私たちは赤くなれなかった桜だ。呪われた蒼に染められた花びらだ。日陰で花びらを散らすそのときを待つ蒼い桜だ。人と違うことは当たり前なのに、恐ろしくてたまらないことを私は知っていた。
「あー! さっきの子だよね?」
 はっとして振り返ると、入学式前に私の腕を掴んで話しかけてきた女の子だった。
「あ、さっきの……」
「さっきはいきなりごめんね、自己紹介もせずに。私、泉谷鈴花(いずみやすずか)。よろしくね」
 パチリと音が聞こえそうなほどの大きなウインクがとても似合っていた。こうまじまじと見てみると、とても可愛らしい顔立ちをしていた。すこしつり上がった猫のような目は長い睫毛で囲まれていて、頬のそばかすがお茶目さを感じさせた。ふたつに縛られた薄茶色の髪は艶やかで滑らかな溶けたミルクチョコレートを思わせる。背は私よりちょっと低い。
「私は黒田蜜瑠。よろしく」
「みつるちゃんかぁ……じゃあ黒蜜ちゃんだね!」
「くろみつ……?」
「黒田蜜瑠、略して黒蜜。私にしてはいいセンスだと思わない? 甘くて美味しそうだし」
 ニカッと笑う泉谷さんは太陽に照らされた向日葵のようだと思った。見ていて嬉しいような照れるような、そんな気持ちになる。
「私、食べ物じゃないし……でも気に入った」
「でしょ? じゃあ黒蜜って呼ぶね。よろしく!」
「こちらこそよろしく……泉谷さん」
「苗字じゃなくていいわよー。よくスズって呼ばれるの。ね?」
「うん、スズちゃん」
 私には早速友達ができたようです。それもまた甘そうなあだ名まで付けられて。


こんばんは、佐倉です。お読みいただきありがとうございました。
スズちゃんが好きです。こういう積極的な子っていいですよね。
読みましたのサインに是非とも拍手のほどよろしくお願いいたします。
次回は7月29日更新です。

ランキング参加中です
にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へにほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ


更新通知をLINEで受け取る


←前のページ 目次 次のページ→