140字SS 021~025

021 ピエロ

「まだ帰りたくない」と冗談混じりで言ってみた。
叶わないことは二人とも承知している。
あくまでも「戯れ言」のつもり。
二人のピエロには願いを叶える力はまだなかった。




022 蝉

蝉が鳴いている
誰かの愛情を、性を求めて鳴いている
夏の風物詩として風流なものだと人は言ったが、あれは寂しさと欲求の嘆きではないのか
7日間の命の嘆き




023 死者の使者

二羽の烏が呼応するように鳴いている
時刻は丑三つ時
彼岸の者がやって来たのを告げるかのように私には聞こえた




024 守りたい

手を伸ばすと触れそうで触れられない距離感で様子を伺われる
呼吸が聞こえるほどの距離なのに触れられなくて焦れったい
でも僕が触れようとすると怖がるから動かない
触れられるのを待っているよ




025 雨宿りの恋人

外を見上げれば彩度のない白い空で、しとしとと屋根に雨水が当たる音がした
「雨の日は外に出たくない」とクッションを抱きかかえて呟く君に僕は答えた
「僕は雨の日が好きだよ」
だって君が帰らないでずっと傍にいてくれるから




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