蒼血のアフェクシオン Chapter01 魔法の学園 08

 夕暮れまで他愛のない話をして、僕は莉那と店を出た。睦樹は別任務の話があると言って馨とまだ店に残っている。
 拓磨や莉那は治安部の特務魔法科に所属している。そもそも「特務魔法士」というものは北辰の巫女の勅命で選ばれた魔法使いのことだ。治安部を含む国務機関ポラリスで働く職員は区立学園を卒業時に取得する魔法士二種、その後試験を受けて取得する魔法士一種の資格を持っている。しかし特務魔法士はその資格無しに例外的に治安維持活動を行うことができる。全員が高ランクの魔力を持ち、年齢・性別は問わない特殊な部隊だ。巫女の予知によって「選ばれた」特別な魔法使い。それが拓磨ら特務魔法士である。
 しかし特務魔法士でも特務魔法科に属さない魔法使いもいる。それが赤髪の青年、加賀睦樹である。彼は北辰の巫女に導かれた特務魔法士であるが、自身の魔法の特性故に救急救護科に所属しており、難病治療や人命救助が主な任務である。今日もきっとそのあたりの任務の話でもしているのだろう。
 ガス灯のあかりがぽつぽつと灯りはじめ、夕と夜が混ざった紫の空に星が姿を見せ始める。
「はーさん、新しい制服出した?」
 店で散々泣いて騒いで、やっと落ち着いた莉那が口を開く。きっと有希さんのことだからお茶に精神安定効果でもつけておいたのだろう。
「帰ったらやるよ」
「相変わらず遅いのね。これだから寝坊しても1秒で移動できる人は」
「んだよ。別に制服が変わることくらい何でもないだろ」
「まあ、そうね。あたしたちは変わらないわ」
 莉那があまりにも悲しそうにつぶやくものだから居心地が悪い。有希さん、効かせすぎだ。
「どうせ、アフェクシオンもつかないしいな」
 朝、睦樹に言われたことを借りてみる。
「そうね、少し残念かしら」
「僕は面倒だからいい」
「はーさんらしいこと言うのね」
 莉那がやっと笑顔を見せた。僕より背の低い小柄な彼女がどれだけ大きなものを背負っているのか僕は知らない。けれど、チームメイトとして過ごした時間を思えば、少しくらいは察することくらい容易いのかもしれない。
「はーさん、ちょっと飛ばない?」
「えー、僕ホバリングしなきゃいけないんだけど」
「いいじゃない、少しくらい付き合ってくれたって」
 莉那は魔法を使役する。不可視の力の網が僕を包んでふわりと持ち上げる。
 空を飛ぶと、僕は「トクベツ」なのだという気になる。きっと莉那もそうだ。
「この街はいつも美しいわね」
「汚いところもいっぱい知っているけどな」
 上空300メートルから見下ろした町並みは、銀河の中のような光の海だった。

 ふわり、と桜の花びらが舞った。
 通い慣れた区立篠崎学園の大きな校門前に拓磨は降り立った。ただでさえ高度な魔法をこうも容易く行使しているだけで目立つというのに、若草色の癖のある髪が一際存在感を放つ。結局、今朝になって下ろした黒のスラックスに襟に黒いラインが縫い付けられたワイシャツ、普通科であることを表す緑色のネクタイ、胸に校章が付けられた黒のブレザージャケットを身に着けていた。糊がきいていて少しまだ固い。他には財布くらいしか入っていない青いリュックサックに、魔具であるイヤホンという出で立ちだ。
 他の生徒からの視線を集めているが拓磨は気にも留めずに校舎に向かって歩き出す。講堂で始業式が行われる予定だが拓磨はさらさら出る気がない。屋上にでも行こうかと中庭を歩いていると、花壇脇のベンチに「銀髪」の少女が腰かけていた。


こんばんは、佐倉です。お読みいただきありがとうございました。
初期設定より莉那が大人しいです。これから大暴れしてくれることを期待します。
読みましたのサインに是非とも拍手のほどよろしくお願いいたします。
次回の更新は08/26夜9時です。

ランキング参加中です
にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へにほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ


更新通知をLINEで受け取る


←前のページ 目次 次のページ→