300字SS 夏の終わり

 指揮者が音を収めた一瞬の間。私は「夏が終わった」と悟った。
 残響がびりびりと頬を撫でる。達成感と後悔。審査員が私たちを見定める眼差しが痛かった。
 楽器を下ろし立ち上がると、緊張が解けるように拍手が送られた。
 私のこの夏はなんだったのだろうか。たった十三分のために何百時間も練習した。毎日朝から晩まで。汗を流したこの夏はなんだったのだろうか。
 あんなに悔しかったのに涙は出ない。悔しくて泣けるほど本気になれていなかった私の存在に気が付いた。本気になって悔しがることを怖がっていた私が、私の足を止めていたのだ。そのことが、悔しくてたまらなかった。
 結果は銀賞。
「次こそは全国へ行く」
 私は悔し涙を流す覚悟を決めた。


こんばんは、佐倉です。お読みいただきありがとうございました。
Twitter企画「Tw300字SS」に初参加しました。
300字は短いようで案外書きごたえがありますね。
お題が「音」ということで、吹奏楽コンクールを主題に書いてみました。
読みましたのサインに是非とも拍手のほどよろしくお願いいたします。

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