蒼血のアフェクシオン Chapter01 魔法の学園 10

「嫌いなんてそんな、僕は一言も言ってはいませんよ」
 怒りで震える声で言う。立ち上がった莉那からの驚きの視線が痛い。
「言わなくても分かるわ。私に『思い出せ』ないものはないのだから。貴方の思いも、過去も、未来も、全部知っている。今日の昼食も、いつ死ぬのかも。全部」
 しっとりとした声で述べる希咲に僕は本能的な畏怖と嫌悪を感じる。僕が隠したい恥ずかしいことも全て知っているのだ。過去の若さゆえの過ちも、睦樹とのセックスも、邪な想像も、彼女は全て知っている。それほど恐ろしい脅威はない。それに……彼女は僕に殺させたのだ。
「あと、敬語はやめてね。私が巫女だとばれたら大パニックになってしまうから。私のことも希咲でいいわ」
 何も言えなくても彼女には伝わっているのだ。それでも平然と言う。巫女は人ではない。そう僕は感じた。
 憎しみに心が染められる。真っ黒に、深く、泥のように。
 僕が何も言えないでいると、希咲はこちらを向いて微笑んだ。
「私を殺そうとしても無駄よ。私が死ぬのはずっと先のことなのよ? 護衛としてしっかり働きなさい」
「ちょっと待ってください」と莉那が話を遮る。
「はーさんが巫女さまを殺す? 何で? あたしたちは巫女さまに選ばれた僕(しもべ)なのよ? はーさん、なんとかいいなさいよ」
 莉那の両手が僕の肩に強く食い込む。彼女の怪力なら下手したら鎖骨が折れそうだ。激しくすがるようにゆすられて視界がチカチカする。
 見かねた睦樹が止めに入る。莉那の額にキスをして魔法をかけた。莉那はたちまち体の力が抜けてその場に座り込んでしまう。莉那は、泣いていた。
「希咲も言い過ぎだ。拓磨だって君を今すぐ殺そうだなんて思ってないだろ? それは希咲だって分かってるはずだ。拓磨も怖いだけだろ?」
 僕は無言でそっぽを向いた。睦樹はそれを同意ととる。
「そうね、少し脅かし過ぎたかしら」
 希咲は悪びれた様子もない。様子を見ていた希咲の義兄の馨が、ひとつ溜め息を吐いて、やっと口を開いた。
「希咲はこの通り気難しいけれど、仲良くしてあげてください。それと、昨日の事件の進展がありました」
「昨日って、あのバスの爆発事故のことかしら?」
 睦樹の魔法が切れ、動けるようになった莉那が涙を拭きながら立ちあがる。希咲に席を譲り、腰掛けさせた。
「昨日のバスの爆発事故ですが、事故ではなく事件だと分かりました」
 特務魔法士の拓磨、莉那、睦樹が息をのむ。
「爆発したバスから火薬と爆弾片を確認。占師の解析の結果、自治区外で取り付けられた爆発物が区内に入ると爆発する仕組みになっていました」
「犯人は分かってるんですか?」
 拓磨が尋ねると、馨は「そこまではまだ」と葡萄色の目を伏せた。
「犯人は、『ノーマライズ』よ」
 希咲が声をか細い声を張った。


こんばんは、佐倉です。お読みいただきありがとうございました。
新たなキーワードが登場しました。物語が動きはじめます。
読みましたのサインに是非とも拍手のほどよろしくお願いいたします。

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